
慶大は10月28日からの早慶戦で、優勝の可能性を残している。不動の三番・柳町とリーグ本塁打記録がかかる四番・岩見が機能すれば勝機は見えてくる/写真=井田新輔
2年生で現役最多タイの打撃センス
名前の由来からしても、記録を更新するために生まれてきた打者なのだ。
「どんなことも達成するまで根気強く頑張ってほしい、という願いから名付けたと、親からは聞いています」
東京六大学のオフィシャルホームページの通算打撃ランキング(第6週終了時点、10月17日現在)でトップタイにつけていたのが陸の王者・慶應の三番・
柳町達(慶應義塾高)だ。2年生にして立大・
飯迫恵士(3年・神戸国際大付高)と並ぶ56安打。「数字ですか? 見ることはないです。人から聞かれたときにチェックするくらい」。今秋は2014年春以来の優勝がかかった早慶戦を残しており、さらなる上積みが期待される。リーグ最多安打は明大・
高山俊(現
阪神)の131安打。大学4年を折り返す段階で、目指せる位置にいる。「意識することはないです。4年になってそういう段階にいれば別ですが……」。爽やかな笑顔で語った。
茨城・新利根中時代に在籍した取手シニアでは全国大会での優勝経験もある。2学年上の小原徳仁が慶應義塾高に進学したのが縁で、柳町も同校へ入学。中学の評定は45点満点で43点のエリートは「勉強ができて、甲子園、大学も目指せる」のが志望理由。7年の一貫教育を経て「プロ野球選手」が、柳町の描く夢だ。
3年間で甲子園には届かなかったが、高校通算30本塁打を放ち、神奈川屈指の左打者に成長。慶大では高校時代の三塁手でスタートしたが、
大久保秀昭監督(元近鉄)は打撃センスに着目。出場機会を優先させるため、1年春の開幕前に外野へ転向させた。デビュー戦(対法大1回戦)で本塁打。慶大の先輩で歴代最多23本塁打の
高橋由伸(現
巨人監督)もできなかった快挙。同春、打率.311で慶大史上初の1年春でのベストナインを受賞。ちょうど明大・高山が卒業した翌春というタイミングも重なり、新スター誕生を予感させた。
高山は2年秋時点で62安打、猛チャージかければ!?
1年秋以降もヒットを積み重ね、この秋は早くも50安打を突破。1年春から4季連続本塁打で、通算30打点も挙げている。「これまではとらえてもファウルが多かったスピードボールにも、対応できるようになりました」。
先輩・
岩見雅紀(4年・比叡山高)からも好影響を受けている。岩見は歴代3位の21本塁打。高橋の持つリーグ記録まで2本に迫る右打者の打撃練習を間近で見てきた。「タイプは違いますが、負けたくない」。変化球の見極めなど、プロ注目スラッガーから学んだ技術は、多くの引き出しになっている。高山は2年秋の時点で62安打を放ったが、柳町は「70安打くらいですか?」と答えた。高山は3、4年の4シーズンで69安打と猛チャージをかけ、
高田繁(元巨人、現
DeNAGM)の127安打を更新しただけに、柳町も十分、到達可能な数字だ。50メートル走6秒2の俊足で、高山同様、脚力を生かした内野安打でのヒット量産の可能性も広がる。左投手も苦にせず、シュアな打撃は天才的。1年時は背番号「35」を着けた。入学当時は高橋監督、そして高校、大学の先輩でリーグ戦通算15本塁打62打点の
谷田成吾(JX-ENEOS)が着けた「24」にもあこがれたが、今年からは「一番になりたい」と自ら「1」を選んだ。残り2年、柳町は神宮でトップを達成するため、努力を続ける。(取材・文=岡本朋祐)
PROFILE やなぎまち・たつる●1997年4月20日生まれ。茨城県出身。180cm72kg。右投左打。太田小1年時から新利根エンゼルスで野球を始め投手。6年時に県大会優勝。新利根中時代は取手シニアに在籍し、2年春の全国大会優勝、3年夏は全国準優勝でベストナイン(外野手)受賞。慶應義塾高では1年夏から三番・三塁で出場し、高校通算30本塁打。慶大では1年春から中堅のレギュラーでベストナイン受賞。同春、1年秋と打率3割、今秋も4カードを終えて打率.310。東京六大学リーグ通算50試合、183打数56安打、5本塁打、30打点、打率.306。