
1月1日付で就任した早大・小宮山監督は開幕カードの東大戦で連勝。指揮官として「ほぼシナリオどおり」と順調なスタートを切っている/写真=井田新輔
元プロ指揮官が母校率い神宮で初指揮
平成元年。早大の4年生だった
小宮山悟(元
ロッテほか)は主将兼エースとして背番号「10」を背負い、神宮のマウンドに立っていた。
その30年後。平成最後の春に母校の監督として背番号「30」のユニフォームを着て、神宮のグラウンドに足を踏み入れている。
4月20日、東京六大学リーグ戦の初陣となった開幕の東大1回戦。打線が2本塁打を含む17安打で13得点を挙げると、エース左腕・
早川隆久(3年・木更津総合高)が7回1失点と好投。13対1で勝利した。
試合後、報道陣に囲まれた小宮山監督は「全員がよく頑張ってくれた。監督がどうということのない試合でした」と選手たちをほめた。その後、ロッカールームで主将・
加藤雅樹(4年・早実)からウイニングボールを手渡された。指揮官は受け取ると、「あと9個、くれよ」とリクエストした。10個の勝利球。それは「勝ち点5の完全優勝」を意味する。
早大時代にはリーグ戦通算20勝。卒業後はロッテ、横浜(現
DeNA)で通算117勝を挙げ、MLBメッツでも活躍した。2009年に現役を引退。12年から3年間、早大の特別コーチとして投手を指導し、今年1月1日付で早大の第20代監督に就任した。
「(監督を)引き受けたときから、重圧はもちろんあります。OBの方々が学生時代に思い描いていた野球をお見せできたら、と思っています」
最終週・早慶戦までにチームを完成形に
早大伝統の野球。それは「学生野球の父」であり、初代監督・飛田穂洲氏の「一球入魂」に尽きる。1球に魂を込める、スキのない野球だ。
新指揮官は「4連覇したときの雰囲気に戻す」ことを目標としている。
02年春から03年秋、野村徹監督(当時)に率いられたチームは早大史上初の4連覇を達成。03年、小宮山監督はメッツでのプレーを終え帰国。現役続行を目指しトレーニングを積んでいた。そのときに訪れた東伏見グラウンド(現安部球場)の雰囲気を「そこは別世界。スキがなかった」と振り返る。
加藤主将は言う。
「自分たちの中から自然にそういう雰囲気が出てくるように作り上げていきたい。ボール回し、カバーリング、走塁。練習から絶対にスキを作らないようにやっています。間違いなく、いい方向に進んでいると思う」
今年から、練習の最後に全員でのランニングを復活させた。「全員で足並みをそろえ、声をそろえて走る。チームが一体になっている感じがします」と加藤。このグラウンド1周により全員の意思を統一し、スキをなくすことにもつながっている。
開幕の東大1回戦を前に、小宮山監督は選手たちに「最終週の早慶戦までにチームを完成させてほしい」と言った。4月21日の東大2回戦にも8対2で勝利。初の勝ち点を挙げ、最高のスタートを切った小宮山監督はうなずきながら言った。
「結果に至るまでのアプローチを含め、こちらの期待に応えるくらいになっている。ほぼシナリオどおり。このまま最終週までもっていけるようにしたい」。東大2回戦のウイニングボールも、選手たちから贈られた。「あと、8個です」。小宮山監督の理想はあくまで「完全優勝」だが、早慶戦まで約2カ月間、厳しい戦いを覚悟している。(取材・文=佐伯要)