
日本生命・梶田監督[右から3人目]は就任1年目である。徳島・池田高では1986年春のセンバツ優勝投手。筑波大を経て、日本生命では外野手でプレーした。社会人日本選手権では初戦突破を遂げた[写真=早浪章弘]
「一歩」の差を埋める想像力
野球部を離れ社業に専念していた期間も含めれば、入社してから30年以上が経過した。選手、コーチとして、長年、日本生命を支えてきた梶田茂生ヘッドコーチが昨年11月に指揮官就任。54歳の新人監督が誕生した。さい配1年目は都市対抗出場こそ逃したが、日本選手権で初戦突破を遂げ、二大大会初白星を挙げた。
開幕日の第2試合、JR東海との1回戦で期待を寄せる若い力が躍動した。右腕・
吉高壯(日体大)、
立松由宇(立正大)の2年目バッテリーが試合を作り、新人の池上颯(立命大)の先制2点適時打がビッグイニングを呼んだ。この2回の5得点でペースをつかむと2年目左腕・
又木鉄平(東京情報大)の好救援もあり、7対2で逃げ切った。今年から四番を任される3年目の
竹村陸(近大)は「監督は皆とコミュニケーション取っており、心が通じ合っています。『思い切り振りにいけ!』と言ってもらえているので、何も考えずにバットを振りにいけます」と3安打の活躍を見せた。
見た目以上に大きい3点差
都市対抗準優勝・東京ガスとの2回戦も、先発の6人が入社1、2年目の選手で占めた。突破すれば勢いに乗れる試合だったが、相手を上回る9安打を放ちながら3併殺が響いて完封負け(0対3)。3点のビハインドが、見た目以上に重くのしかかった。年間通して、犠打をあまり使わない戦いを展開してきており、大舞台でも選手に託したが、この判断は難しいところ。ベンチワークで打開する選択もある。試合後の梶田監督は言った。
「私がもう一工夫、ああいう状況になったんですから、バントで送ることも必要だったかな、と。これは後の反省になるんですが。広い視野を持てないとダメですね。まだ私の視野では、狭いと感じます。相手の選手の動き、作戦の動きをもっと広く私が見られないと自分のことで精いっぱいになってるところがまだまだ多くある気がします」
ベンチで進言するヘッドコーチと決断する監督とでは、似ているようでもまったく違った。
広い視野を持つこと、これは梶田監督が常々選手に話してきたことだ。「想像力を持って行動しましょうということをベースにずっと言っていることです。何をするにも想像力を働かせて、それがあって、行動がある。練習もそう、ゲームでもそう、相手の動きでもそう、それが一歩早い動きにつながったりしますので。力的には、そんな大きな差は選手個々にないと思うんです。やっぱりあと一歩のところ、そういうところに差が出るのかな、と。得点差以上に、個々の力というよりもチーム全体の力の差があったと感じてます。たかが3対0かもしれないですけど、この差を埋めるのが、大変なんだろうなと感じてます。本当に強いチームは簡単に1点を取らせてくれない。若い選手が経験を積めたので、その経験を、結果につなげるようにしていきたいです」と来年の巻き返しを誓った。
今年のチームスローガンは「邁進〜超V字回復〜」。原田拓実(立正大)、廣本
拓也(法大)、
皆川仁(立正大)ら強い日生を支えた選手も健在で、地力はある。今年の都市対抗予選では2年連続で予選敗退。史上最多61回目の出場を誇る名門は、地元・大阪での1勝により、2023年の強豪完全復活への筋道を立てたと言える。(取材・文=小中翔太)