菅野主将は白獅子旗を手にした。堂々の準優勝だ[写真=矢野寿明]
東北勢による2度目の都市対抗制覇の夢は叶わなかった。初めて決勝の舞台まで勝ち上がったJR東日本東北(仙台市)だったが、1対3で三菱重工Eastに敗れて準優勝。06年のTDK以来となる日本一には、あと一歩届かなかった。
今季のJR東日本東北が乗り越えるべきテーマとして掲げていたのが「2戦目のカベ」。都市対抗の本戦は今年で4年連続出場となるが、21年にベスト8へ進出して以降、2年連続で2回戦敗退が続いていた。西村亮監督(駒大)は言う。
「初戦を勝ったあとの2回戦で失速してしまう。JABA大会でも2戦目にカベがあって勝ち切れなかった。そこで2戦目をクリアできるようにチーム力を上げようと、選手たちに伝えてきました」。
だが、3月のJABA東京スポニチ大会、4月の日立市長杯、5月の東北大会と2戦目ではなく、初戦で3連敗を喫した。「向上心が『あれもやりたい。これもやりたい』という雑念につながってしまいました」。
しかも、大事な都市対抗の東北2次予選を前には、主力に故障者が相次いだ。だが、「逆に必死な感じさが出てきて、急激にチームが変わりました」と西村監督。菅野赳門主将(駒大)も「勝てない時期がありましたが、攻守交替のときに駆け足をするなど、自分たちのやれることから変えていきました」とひたむきな姿勢がチーム復調のきっかけとなっていった。
勢いに乗った2回戦突破
東北二次予選は3連勝で第1代表の座を獲得。五番の主砲・
大西蓮(履正社高)は2戦連発を含む11打数7安打6打点の大当たりで打率.636をマークした。「昨シーズンまでは四番を任されていて考え込むことが多かったのですが、今季は思い切ってバットが振れるようになりました」。本大会でもJR西日本(
広島市)との1回戦での第1打席。一死満塁から左越えの先制グランドスラムを放つと、第2打席も左翼席へ運ぶ2打席連続本塁打。大西の活躍で初戦を5対2で突破すると、カギとなる2回戦は日本製鉄かずさマジック(君津市)に4対2で勝利。
西村監督は「1回戦のあとに仙台へ戻り、自分たちのグラウンドで汗を流してペースをつかんでから再び、東京へ乗り込んできました。一つ勝って満足することなく、いつもどおりに心を安定させて戦えたと思います。今日は選手たちを褒めてやりたい」と満足気な表情を見せた。カベを越えたチームは勢いに乗り、準々決勝、準決勝を突破して決勝進出。準優勝の結果を受けた菅野主将は言った。
「今大会は1試合ごとにチームが成長していきました。相手投手の狙い球などチームとしての決め事を徹底できましたし、ピンチで粘って最少失点に抑え、攻撃につなげる自分たちの野球ができました」
西村監督も手ごたえを語った。
「投手の枚数やチャンスでの一本に課題が出ましたが、目の前で胴上げを見た悔しさをチームの力に変えて精進を続けていくしかない。選手たちはチームの最高成績だった(11年の)4強を超え、歴史を塗り替えてくれましたから、胸を張って仙台へ帰りたい」
東京ドームで確かな足跡を残した。準優勝チームが手にするのは白獅子旗である。栄光の黒獅子旗を着実に視界にとらえ、地元・仙台へと戻った。(取材・文=大平明)