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第95回都市対抗野球大会

西濃運輸が8年ぶり4強で見えた頂点 プロ注目左腕・吉田聖弥が快投

 

伊万里農林高から入社4年目の左腕・吉田は3試合に先発。4強進出と足跡を残した[写真=矢野寿明]


「小さな積み重ねが奇跡を生んでいる」と語ったのは、都市対抗で8年ぶりに4強となった西濃運輸(大垣市)を率いた佐伯尚治監督(九州産大)だ。NTT西日本(大阪市)との準々決勝、延長タイブレークの11回表に二死満塁から主将・野崎大地(久留米工大)がレフトへ豪快なグランドスラムを放ち、8対4で勝利した。

 監督就任と同時に野崎を主将に任命した佐伯監督は「このチームは野崎のチーム。実は1回戦に勝った後の練習でノックがボロボロだったんですが、野崎が全員を集めて叱っていたんです。この試合でも最高の仕事をしてくれました」と褒め称えた。野崎主将は「元々、力はあるチーム。大垣のグラウンドでやっている野球が東京ドームでもできている」と胸を張った。昨年の都市対抗は1回戦で敗退し「この一年は選手一人ひとりが自立し、それぞれの持ち場で練習に取り組んでくれました」と野崎主将。佐伯監督は明かす。

「ウチの練習量はかなりのものなので、選手はたくましくなっています。また、全員で声を出してやっていこうという方針ですし、学生のチームに似た雰囲気があって一致団結しています。そして、挨拶や礼節など野球以外のところも大事にしてきたので、今は選手が環境面の整備を率先してやってくれているんです」

 グラウンド内外の行動の一つひとつが「奇跡」と指揮官が表現する劇的な勝利につながったと感じている。

指揮官が指摘した精神面の成長


 投手陣では左腕・吉田聖弥(伊万里農林高)が快投。4試合中3試合で先発し、JR東日本(東京都)との1回戦では7回表、2点目を奪われてなおもピンチの場面で佐伯監督がマウンドへ向かったが続投。四球を出したが次打者を三振に仕留めた。「吉田が最も成長したのは精神面。この試合でも安易に勝負に行かず、丁寧に我慢強く投げてくれました」(佐伯監督)。試合は延長11回タイブレークの末に6対5で逆転サヨナラ勝ちし、7年ぶりの白星。佐伯監督も3回目の本大会での指揮で初勝利となり「三度目の正直で勝てて良かった」と胸をなでおろした。

 2回戦は北海道ガス(札幌市)を11対1の8回コールドで退け、吉田は5回を1失点。キレの良い直球とチェンジアップを駆使し、大会通算3試合で18回1/3を投げて21奪三振。「(最速152キロの)真っすぐは球速が140キロでも打たれないのが理想。力感のないフォームで実際のスピードとギャップを感じるようにしています。チェンジアップは落とすよりも、速球と同じ腕の振りで遅い球を投げてタイミングをずらすイメージです」(吉田)。

「14年に優勝したときと似た雰囲気がある」と、当時はエースとして橋戸賞を獲得した佐伯監督。しかし、準決勝はJR東日本東北(仙台市)に4対8で敗れ「昨年の日本選手権も4強で、また準決勝のカベに阻まれて悔しい。ただ、今の打線なら上を目指せるので、あとは誰を使うのか迷うくらい投手が出てきてほしい」と語った。野崎主将も「達成感はありますが、佐伯監督を日本一にしたかった。来年は優勝を狙い、3連戦を戦える体力面も鍛えたい」とさらなる鍛錬を誓う。「東海の暴れん坊」と呼ばれる西濃運輸。地元・大垣で鍛錬を続ける。(取材・文=大平明)
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