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第95回都市対抗野球大会

エイジェックが都市対抗初戦突破 選手63人で悲願の初勝利 大所帯で培われたチーム内競争

 

エイジェックは日本製鉄瀬戸内との都市対抗1回戦で、逆転勝利。応援団に勝利の報告し、選手たちの表情は誇らしかった[写真=高野徹]


 9回表二死走者なし。最後の飛球をつかんだ右翼手・草野里葵(帝京大)はウイニングボールが入ったグラブをそのまま頭上高く、誇らしげに掲げた。今夏の都市対抗に3年ぶり2度目の出場を果たしたエイジェック(小山市・栃木市)。3年前と初出場した昨秋の日本選手権は、ともに9回を迎えた時点ではリードしていたが逆転負けを喫し、あと一歩で勝利を逃してきた。だが、今年の都市対抗ではこれまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように日本製鉄瀬戸内(姫路市)との1回戦で、5対4の逆転勝利。ついに全国大会での初白星を手にし、難波貴司監督(東海大)は「心からうれしい」と喜びを語った。

 今大会、エイジェックは北関東予選を初めて第1代表で通過した。強みは、若さと選手層の厚さだ。チームの平均年齢は20代半ばで、1年目の片平吉信(城西大)と高岡佳将(上武大)が一、二番に定着。「社会人の投手は球が速いので、スイングスピードを上げる練習を継続してやってきました」(片平)。「逆方向を狙ってスイングすることで体の開きを抑え、打ち損じが少なくなりました」(高岡)。難波監督も「打線を引っ張ってくれた」と攻撃面では2人に最も高い評価を与えている。

A、Bチームで切磋琢磨


 昨年は22人、今年は25人の選手が新たに加入。総勢は63人となっており、難波監督は「AチームとBチームの2チーム制を採用し、Bチームだけでもオープン戦ができるようになったので、調子の良い選手をBチームから昇格させることも、Aチームの調子が悪い選手をBチームで調整させることもできるんです」とメリットを語る。

 チーム内の競争も激しく片平は「一日、一日が勝負。一日を無駄にできない」と話している。投手陣でチームを支えたのが金城乃亜(専大)と河北将太(東洋大)の両右腕だ。北関東二次予選で金城はSUBARU(太田市)に1失点で完投勝利。河北も日立製作所(日立市)に対し2失点で完投して勝利につなげ、第1代表の立役者となった。

 都市対抗1回戦は河北が先発するも、2回途中で降板。3点を追いかける展開となった6回裏に2点を返して、なおも二死一、三塁から片平がライトへ同点打。さらに相手の失策で2点を挙げて勝ち越すと、1点差に詰め寄られたものの8回途中から登板した金城が試合を締めた。

 難波監督は「監督になってから3点差を逆転したのは公式戦で初めてではないか。これまでなら2、3点で終わっていたところが一気に5点を取ることができて、チームの成長を感じます」と語った。2回戦は指揮官の古巣でもある日本通運(さいたま市)と対戦。1対7で敗れ「野球の神様でも勝たせてくれるのは1度まで。これからはその先を意識して優勝候補と言われるようなチームをつくりたい」と難波監督。また、大所帯をまとめてきた主将の京橋幸多郎(白鴎大)は「1勝できたときは、応援団の皆さんと一緒に喜ぶことができて最高でした。この気持ちを忘れることなく、勝利を5回続けて目標の日本一を求めていきたい」と話した。今季はチームの歴史を塗り替え続けたエイジェック。この経験と勢いを、次のステップへとつなげる。(取材・文=大平明)
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