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第48回全日本クラブ選手権

マツゲン箕島硬式野球部が悲願の初勝利へ虎視眈々 キーマンは新人右腕・奥田貫太 

 

走者を背負ってからの粘投が持ち味。ここ一番のストレートには絶対の自信がある[写真=ツクイヨシヒサ]


 今年の全日本クラブ選手権覇者となったマツゲン箕島硬式野球部(和歌山)。チームを指揮する西川忠宏監督(箕島高)が、4大会ぶり6度目の優勝の原動力に挙げたのは新人右腕・奥田貫太(花園大)である。千曲川硬式野球クラブとの1回戦を7回1失点で勝利投手。大和高田クラブとの準決勝では8回無失点と、決勝進出へと導いた。2試合で防御率0.60という安定感抜群の投球で最高殊勲選手賞に選出された。

「気持ちだけは負けないようにして投げた」。予選では納得のいかない投球もあったが、全国大会では、うまく要所を締めることができたという。

「チームには、僕の後ろに頼れる投手陣がそろっているので、思い切って投げることができました。立ち上がりをしっかりと入れたところも、良かった点だと思います」

 準決勝では奥田の後を受けた右腕・坂本龍平(朝日大)が9回の1イニングをピシャリ。準決勝と同日に開催され、7回コールドで制した決勝では5投手で継投し、投手層の厚さを見せつけた。2019年に同チームが優勝したときのメンバーは、もう誰も残っていない。若い選手たちの躍動が、頂点への原動力となった。西川監督も、「若さのあるチームですから、伸び率に期待したい。今回の優勝によってもう一段階、元気なチームになってくれるんじゃないかと思います」と顔をほころばせる。

 指揮官が「初戦の入り」と同じぐらいの勝負どころと踏んだ準決勝。マウンドを任された奥田は、スリークオーターから放たれる力強いボールで、8安打を浴びながらも失点は許さなかった。走者を背負った場面では、140キロ台後半の真っすぐで打者を抑えつけた。

「ホームベースの横幅を大きく使うのが、自分のピッチングだと思っています。角度をつけた真っすぐと、同じコースから変化するカットボールの組み合わせには自信があります」

 球種による高低差に緩急と、ストライクゾーンの奥行きまで利用した立体的な組み立て。落ち着いたマウンドさばきは、貫録すら感じさせた。

仕事と野球に向き合う毎日


 マウンドで躍動する奥田も、朝から昼にかけては、スーパーの新入社員。主に品出し業務の担当として、汗をかく毎日を過ごしている。

「仕事と野球の両立については、最初は難しかったですね。仕事のほうは慣れていない内容が多いですし、終わった後の練習との切り替えもなかなかうまくいかなくて……。精神面でも体力面でも、疲れがたまってしまった時期もありました。でも、いまはリズムよく生活できています」

 今大会でひと際、大きな存在感を放った期待のルーキーは、さらに大きなステージへ希望をふくらませる。

「社会人野球日本選手権で1勝を挙げることが目標なので、そこへ向けてまた一から練習に励んでいきたいと思います。どこが相手でも、負けない気持ちは、めちゃめちゃあります。精いっぱい投げ、多くの方に応援してもらえるように頑張りたい」

 1回戦では、全国屈指の強豪・NTT東日本と対戦する。力試しには、これ以上ない相手である。マツゲン箕島硬式野球部は4大会ぶり7回目の出場で、悲願の大会初勝利を狙う。(取材・文=ツクイヨシヒサ)

社会人日本選手権1回戦ではNTT東日本と対戦。奥田は「1勝」を目標とする[写真=ツクイヨシヒサ]

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