週刊ベースボールONLINE

第49回社会人野球日本選手権大会

守りの野球で西部ガスが初の8強進出 初の生え抜き指揮官・松薗史敏監督が目指す理想像

  0

西部ガスは今季、3代目の松薗監督[右端]が就任。初めて同社出身の指揮官が、チームを8強へと導いた[写真=宮原和也]


 35歳の指揮官率いる西部ガスが日本選手権で初のベスト8入り。新たな歴史を作った。2021年の創部時からコーチを務め、17年からは指揮を執った香田誉士史監督(駒大監督)が昨年で退任。後任には松薗史敏コーチ(九州共立大)が昇格し、初めて西部ガス出身の監督誕生となった。

「(前任の杉本泰彦監督、香田監督は)2人ともアマチュア球界では名将と言われる方で、その後というのはすごくプレッシャーはあったんですけど、逆に創部初めての生え抜きの監督ということで、思い切りよくやれるというところで、今年の僕のテーマは『失敗を恐れずにやる』。初めての新任監督なので失うものは何もないかなと恐れずにやっている結果がうまくいっているかなと思います」

 JR東日本との日本選手権1回戦では、初回に先頭打者の樋口昇樹(沖データコンピュータ教育学院)がレフトへ安打を放つと、好走塁で二塁打とした。思い切りの良さで打線を勢いづけると先制、中押し、ダメ押しと理想的な展開で計5点を奪った。投手陣も軸となる二枚看板、高椋俊平(九州国際大)と村田健(東農大)の継投が決まり、見事な完封リレーを完成させた(5対0)。

 昨年のチームを香田前監督は「心技体、いろいろな部分で僕の中では最高傑作になってくれた」と表現していた。そのチームを引き継いだ松薗監督は「昨年、良い状態を作り上げたところからプラスで失敗を恐れずに前向きにやってくれている。精神的に去年よりさらに強くなったのかなと思っています」。その言葉どおり、選手たちは伸び伸びプレーした。

「0対20」からの出発


 12年の創部時のレベルは、厳しいものがあった。初の対外試合はソフトバンク三軍を相手に0対20の大敗を喫した。当時、ショートを守っていた松薗監督は「このままじゃダメだなと思い知らされました。そこからスイッチ入って一つひとつのことを丁ねいにやろうとしたことが今につながっているのかなと思います」。苦難のスタートから12年後、投手と守りに自信を持つチームへと成長を遂げた。TDKとの2回戦では5点リードの終盤に、激しく追い上げられたが、高椋と村田を投入することなく逃げ切った(7対3)。

「こういう場を経験すると成長につながるという思いの中で、展開によってではあるんですけど、勝ちながら育てたいという思いの中で思い切って起用できたかなと思っています。投手陣が良かったので、自信持って全員を送り出せました」(松薗監督)

 指揮官となってから最初のミーティングで話したことは「常勝軍団を作りたい」というものだった。0対20のチームが、そこを目指せるところまで駆け上がった。準々決勝でトヨタ自動車の高い壁に跳ね返された(0対4)が「チームとして成長できた大会だったなと思います。初めて日本選手権の準々決勝まで来られて、社会人トップのトヨタさんというところで試合してどういうチームが勝ち上がるか肌で感じられたというのはかなりの財産になるんじゃないかなと思っています。今日、感じたことを冬に取り組んで、また来年、チャレンジしたいと思います」。

 西部ガスの描く成長曲線は、上昇し続ける。(取材・文=小中翔太)

この記事はいかがでしたか?

アマチュア野球情報最前線

アマチュア野球情報最前線

アマチュア野球取材班、ベースボールライターによる、高校・大学・社会人野球の読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング