
ENEOS・宮澤監督はJR西日本との予選リーグ初戦で、監督としての初勝利をマーク。ウイニングボールを手にした[写真=矢野寿明]
ENEOSは歴代最多12回の都市対抗制覇を誇る。20年から2期目の監督として率いた
大久保秀昭氏は22年の都市対抗で、監督として最多4度目の優勝。昨季限りで退任してチームディレクターに就任し、今季から名門の指揮を執るのは宮澤健太郎監督(明大)だ。
現役時代は、右投げ左打ちの三塁手として活躍。長野県の県立校・岡谷南高から一般入試で入学した明大では、努力を重ね、甲子園組が名を連ねる中で、レギュラーを奪取した。4年春に首位打者を獲得、最終学年では主将を務め、抜群のリーダーシップを発揮した。ENEOSでは、大久保チームディレクターが1期目の監督に就任した06年から7シーズンにわたって主将を務め、黒獅子旗を2度、頭上に掲げた。08年と12年には三塁手として社会人ベストナインに選出され、社会人日本代表でも主将を務めた。チームの主将を退いた13年に都市対抗で優勝したのを花道に現役引退。その後は社業に専念していたが、昨年からヘッドコーチに就任していた。
「大久保チームディレクターからは勝利に執着することを学びました。勝つことにこだわることが勝負どころのワンプレーをモノにし、相手を上回って結果を出すことにつながっていくのだと思います」
監督として大切にしているのはENEOSが築き上げてきた、勝利への伝統を継承していくことだ。
「全力疾走やカバーリングといった基本を徹底し、一球に集中して全員があきらめることなく戦う。大久保チームディレクターのみならず、ENEOSがずっとやってきたことを大事にしていきたいです」
正捕手の2年目・
有馬諒(関大)も「監督は代わりましたが、これまで通りにやらせてもらっています。選手主体のところもそのままなので良いところを引き継いでくださっています」と話している。この冬は例年よりもトレーニングの比重を増やしてきた。「ウエート・トレーニングは徹底してやってきました。選手たちにも『もう一回、しっかりと見直して、足場からやっていくよ』と伝えていて、時間を増やして全員で取り組んでいます」(宮澤監督)。
結果を出し続ける使命
公式戦の初采配となった3月のJABA東京スポニチ大会では初戦でJR西日本を7対2で下して初勝利。「トレーニングで太ももが大きくなました」という村上裕一郎(九州共立大)が勝ち越し弾を放ち、いきなり成果を見せた。宮澤監督は今年のチームスローガンの「Don't stop believing~これが私たち~」にちなみ「私たちらしく普段通り、正々堂々と戦おうと声を掛けてきました。緊張しましたがチームを勝利へ導くことができてうれしいです」と語った。
2戦目は鷺宮製作所に1対2で敗れ、準決勝進出はならなかった(ホンダ鈴鹿に勝利し2勝1敗)が「選手はよく頑張ってくれましたし、全員があきらめずに集中して戦ってくれました」と、ENEOSの野球が実践できていることを評価。猿渡颯(環太平洋大)、飯山志夢(立正大)、林翔大(大阪経大)ら新人に対しては「猿渡は初戦で価値ある先制タイムリーを打ってくれましたし、飯山はどっしりと落ち着いてゲームに入っていました。林は失点こそしましたが、持ち味の強いストレートを見せています」と期待の言葉を送る。
今後については「これまでやってきたことを守りつつ、選手の個性や強みを生かしてあげられれば。プレッシャーは当然、感じていますがこの重圧に打ち勝って結果を出し続けていきたい」と宮澤監督。指揮官は代わっても、ENEOSの変わらない強さを、これからも誇示していくつもりだ。(取材・文=大平明)