
予選リーグではJR東日本を相手に、大会初勝利。背番号89の野口監督はウイニングボールを手にして笑顔を見せた[写真=大賀章好]
茨城トヨペットは2006年に発足し、09年に休部となったものの、18年に活動再開。部員全員が
セールスコンサルタント(営業)として社業に励みながら、昨年は4月のJABA足利市長杯で初優勝を遂げた。都市対抗の北関東地区二次予選では、第2代表決定トーナメント2回戦で日立製作所を3対1で下す金星を挙げた。野口裕貴監督(東洋大)はチーム力が底上げの理由について語る。「昨年5月、トヨタ自動車とオープン戦をしたのですが、トヨタ自動車では制球が良い投手と悪い投手やタイプが違う選手でペアを組ませて練習をしていると耳にしました。それで、選手にヒアリングをしながらペアを作り、そのペアで課題に取り組ませてみたところ、選手が考えて野球をするようになったんです。選手から活発に意見が出てくるようになり、チーム全体に良い効果が生まれました」。兄貴分のチームをお手本にして強化を進めてきた。峯尾京吾主将(国学院大)はこう明かす。
「昨年から投手が粘って投げ、流れが来たら手放さない攻撃を心掛けています。そのために無駄なアウトを減らし、守備ではエラーや四死球をなくす。そんな当たり前のことをやっとチームで共有できるようになってきました。日立製作所戦もその『当たり前』ができたから勝てただけなので当然のことだと思っています」
今季のスローガンに掲げたのは「勇往邁進」だ。「2年連続で同じスローガンなのですが、意味は『目標に向かって、全員で突き進むこと』。今季はミスのない野球への意識を強め、全員で前へ進んでいきたいです」(峯尾主将)。とはいえ、選手が配属されている店舗は茨城県内の全域に広がり、全体練習は週2日のみだ。
「室内練習場はあるのですが寮はなく、17時半が定時なので、それから全員が集まるのは難しいんです。ですから個々で素振りをしたり、ジムに通ったりしています」(峯尾主将)
野口監督は「練習時間が少ないのでオープン戦でいろいろと試すことになります。ただ、野球も仕事も一緒。大切なのはコミュニケーションですから」と話している。
北関東の出場枠は「3」
3月のJABA東京スポニチ大会ではJR東日本との予選リーグで打線爆発。本塁打を含む5本の長打など11安打を放って12対3の7回
コールド勝利。準決勝進出をかけたNTT西日本との一戦は1対2で落として敗退となったが「強いチームと公式戦で戦うことができて、良い経験になりました。JR東日本戦は良い流れになって得点が入りましたが『どうやって得点を取っていくのか』に力を入れ、接戦をモノにしていきたい」と峯尾主将は総括した。
野口監督は「都市対抗の予選突破を目標にしてきましたが、これまでは練習環境を言い訳にしてしまい、強豪を相手にすると引け目を感じてしまうところがありました。でも、そんなことはもう言っていられません。大きな目標へ至る細い道が少しずつ開けているように感じているので、今後はもっと振り込んで打球をもう一伸びさせ、投手はストライクゾーンで勝負できるようにしたい」
北関東地区は今年、都市対抗の出場枠が1増の3枠。昨年は日立製作所に勝利(3対1)したが、次戦の第2代表決定トーナメント3回戦で茨城日産に惜敗(4対6)し、悲願の都市対抗出場を逃した。北関東地区にはこのほかエイジェック、SUBARU、日本製鉄鹿島と群雄割拠である。出場枠は、来年は2に戻るため、この好機を何としてもつかみたいところだ。(取材・文=大平明)