
就任2年目の大河原監督[左端]はベンチでチームを鼓舞。打撃戦となったJR東日本との1回戦を落としている[写真=小河原友信]
「自分たちは取り残されている」
都市対抗大会で歴代2位となる7度の優勝を誇る東芝(川崎市)。主将を務める中村浩人(法大)はチーム内にある危機感をそう表現した。
東芝が所属する都市対抗の西関東地区は全国有数の激戦区だ。昨年、黒獅子旗を手にした三菱重工East(横浜市)。2022年をはじめ、最多12度の都市対抗制覇を誇るENEOS(横浜市)。さらに、今季から活動を再開した日産自動車(横須賀市)と強豪がひしめく中、2つの出場枠を争うことになる。一方、東芝は19年の都市対抗で4強入りしたが、以降の5年間は1勝のみ。昨年は本大会の出場を逃した。
就任2年目の大河原正人監督(亜大)は荒療治に出る。昨年の西関東地区予選に敗れた7月からチームに厳しい練習を課した。「今の時代には合っていないかもしれませんが、かなり練習量を増やしました」。中村主将も「炎天下の中、ランニングや振り込み。やりたくないと思う練習をやってきました」と振り返る。さらに、都市対抗の大会中はライバルである三菱重工EastとENEOSのすべての試合を選手たちに現地観戦させ「悔しい思いからスタートして、1年間、やってきました」と大河原監督。
その後、日本選手権ではベスト8まで勝ち上がり、今季は4月のJABA四国大会と京都大会で準優勝。7月の都市対抗予選は第1代表決定戦こそENEOSに敗れたが、第2代表決定戦は日産自動車に14安打を浴びせて7対2で勝利。2年ぶり45度目の本大会出場を決めた(三菱重工Eastは前大会優勝チームで予選は免除)。
大河原監督は「感謝の気持ちを持ち、人間形成をテーマにして守りの野球を掲げてきましたが、この1年間で強くなってきました。特に、困難に立ち向かって耐える力が付きましたし、選手それぞれが自発的に行動して、そこからさらに考えて動けるようになってきています」と成長を認める。昨年は三菱重工Eastの補強選手として日本一を経験し、今季から副主将の
下山悠介(慶大)も「チームは一歩ずつ前進できている」と手応えを感じている。
主将は9失点を反省
本大会のJR東日本(東京都)との1回戦は大熱戦となった。取っては取られるシーソーゲームで1点を追う9回は二死から中村主将の適時二塁打で同点に追いつく粘りを見せた。しかし、9回裏に力尽き、8対9のサヨナラで初戦敗退。大河原監督は「厳しい練習を乗り越えた選手たちは実力を発揮して、頑張ってくれました。ただ、最後は相手の力が上回りました」と無念さをにじませた。また、本大会では初采配となったが「予選よりも楽しめたと思いますが、サインや継投のタイミングなど後手に回ってしまったところがありました」と反省を口にした。
そして、捕手でもある中村主将は「9点も取られてしまっては勝てない。打線は勢いがありましたし、申し訳ないという気持ちしかありません」と敗戦の責任を背負い、「キャプテンとしてもう一度、チームを見直していきたい」と再起を誓っている。
名門復活へ。タフな状況を克服し、東芝はさらなる飛躍を目指す。(取材・文=大平明)