
今夏の都市対抗はJFE東日本との1回戦で敗退。東京ドームでの悔しさを糧に、次なる舞台へと進んでいく[写真=小河原友信]
「東京でも、どこでもHondaは強くなければいけない」
主将の
辻野雄大(白鴎大)がそう話すように、Hondaは都市対抗大会で3度の優勝を誇る名門だ。前回、黒獅子旗を手にした2020年は狭山市、22年からは同じ埼玉県の寄居町・小川町を本拠地にしていたが、24年1月に南関東地区を飛び出して、激戦区の東京都野球連盟へ所属を変更。だが、昨年は都市対抗の本選出場を逃しただけに、今季は捲土重来を期すシーズンとなっていた。
2年目の多幡雄一監督(立大)が就任当初から選手たちに求めてきたのが「チャレンジ」だ。
「良いときはチャレンジできるけれど、悪くなるとどうしても弱気になってしまう。野球の80%はメンタルが占めていると考えているので、しっかりと対応できるようにしてきました」
心理学者をメンタルコーチとして招き、心の部分を強化した。
「緊張を感じたときにどうしたらよいのか。多くの人に当てはまる、良い結果を出すための考え方ややり方を教えてもらい、練習の一環として取り組んでいます」
昨年は東京地区で都市対抗予選を戦うのが初めてだったため、戸惑うこともあったが「予選が行われる大田スタジアムの風や長くなった移動時間に慣れるために、スケジューリングなどを工夫してきました」(多幡監督)。今季は十分な準備をしてきた。
こうした対策も実り、東京二次予選は第3代表で突破。エース左腕・
東野龍二(駒大)は3試合に先発し、JR東日本戦では1失点の完投勝利を挙げるなど、投手陣を引っ張ってチーム防御率1.50。打線も5試合で34得点。チーム打率は3割を超え、投打に実力を発揮した。
取り組んできたことを体現
本大会では1回戦でJFE東日本(千葉市)と対戦。しかし、先発の東野が6回4失点。中継ぎ陣も失点を重ね、3点ビハインドで9回裏へ。この窮地に代打の三浦良裕(大経大)が2ランを放って1点差。さらに四球とヒットで二死一、二塁のチャンスをつくったが、あと一本が出ずに5対6で惜敗した。それでも土壇場に追い込まれた中で
鈴木薫(国学院大)は3ボール0ストライクから果敢に打っていき、
藤野隼大(立大)は豪快なマン振りのスイング。小口仁太郎(東洋大)も初球をファウルにした後の2球目を左前打と、待つのではなく、自分から動いてアクションを起こしていく積極的な姿勢を貫徹。プレッシャーを全く感じさせないチャレンジを体現した。
多幡監督は「一人ひとり、やるべきことをやってくれたことが、最後の粘りにつながりました。厳しい予選を勝ち抜いて都市対抗の舞台で野球ができ、選手たちに感謝したい」と口にし、辻野主将も「最後まであきらめずに戦うのがウチのやってきたこと。劣勢の中でも、みんなよく戦ってくれました」と振り返った。
ただ、無念の初戦敗退となり「勝って、社員の皆様を盛り上げたかった。それが使命なので常勝チームとなって、強いHondaを取り戻していきたい」と辻野主将。多幡監督は「まったくダメだった訳ではない。これまで積み上げてきたことをさらに追求して選手とともに頑張っていきたい」と語った。秋の社会人日本選手権予選は9月28日に代表決定戦が行われ、7対1で日産自動車に勝利し、3大会連続26回目の本大会出場を決めた。(取材・文=大平明)