
完全試合は8年ぶり。2017年のJR東日本東北の左腕・西村祐太が新日鐵住金広畑との1回戦で達成して以来、2人目だった[写真=宮原和也]
「甘いボールでいいや」「三振を取りたくない」。独自の感性を持つHonda鈴鹿・井村勇介(至学館大)が日本選手権のJR西日本との1回戦で史上2人目の完全試合を達成した。
初回は2者連続三振に仕留める好発進。最高の立ち上がりに見えるが井村は複雑な感情を抱いていた。「(状態は)いいなと思っていたんですけど、三振は嫌だなとは思っていました。あまり良過ぎると、後半どうなってくるのかなっていうので、なるべく序盤は甘いボールでどんどん打ち取っていきたい。ゴロで野手に足で動いてもらって流れを持ってくるっていうイメージなので三振、三振だとこの後きついなと思いながら、また三振かとは思っていました」
これまでは好投していても、後半に浮いた球を痛打されることが少なくなかった。ただこの日にそんな心配は無用だった。「相手打線の感じ的には今日はカーブとチェンジアップが軸になるとは思っていたので、あとはゲームで投げながらどこで速いボールに切り替えるのか、それともそのまま行くのかという、そこだけすごい気にしながら投げていました」。
緩急をつけた巧みな投球術は、付け入る隙を与えない。特に制球力が抜群だった。「コーナーに投げたいときにしっかり投げ切れていたので、そこは良かった。甘い球も多かったんですが、別にそこは甘くてもいいと思って投げているボールなので、狙いたいときにちゃんと投げ切れていたので、よかったです」。

1997年生まれの井村は高蔵寺高、至学館大を経てHonda鈴鹿に入社7年目。ダイナミックなフォームで相手打者を翻弄した[写真=宮原和也]
常にカウントを支配
99球のマダックスでパーフェクトゲーム。バッテリーを組む同級生捕手の
長壱成(駒大)も状態の良さを感じ取っていた。「3球でツーストライク、ワンボールを簡単につくってしまう。ストライク率がすごく高かったと思う。バッターに考える隙を与えないっていうかテンポも早いですし。本来の力を発揮してくれたのかなって思います」。対戦した打者27人中18人を3球以内に追い込んだ。スリーボールになった打者は1人もおらずツーボールになったのが5人だけ。常にカウントを支配した。
井村の投手としての信条は「マウンド上で弱い姿を見せないこと」。都市対抗のJFE西日本との1回戦では7回まで3安打1失点と好投していたが8回に先頭打者本塁打から3連打を浴びてイニング途中で交代。チームとしても逆転負けを喫してしまった。それだけに社会人日本選手権では強い気持ちでマウンドに上がっていた。「前まではどちらかと言うと5回までゲームつくって、あとは行けるとこまでみたいなイメージで投げていたんですけど、今回はとにかく9回を投げ切るっていう思いではやっていました。ほかのチームのエースとか見ていてもやっぱり9回まで投げているので。Honda鈴鹿でエースと言われているピッチャーがそんなんじゃダメかなという思いはあったんで、9回まで絶対行くというのは自分の中で思っていました」
ゲームセットの瞬間は大記録を達成した喜びよりもチームを勝利に導けた安堵の方が大きかった。「全国で一つ勝ちたかったっていうのがすごくあったので、ホッとした。勝ち切れたっていうのが素直な気持ちです。(完全試合は)ラッキーです(笑)」。三振9、フライが9個、ゴロが8個、ライナーが1個。芸術的な99球で大会の歴史に名前を刻んだ。