
秋山は1996年4月9日生まれ。日大鶴ヶ丘高、武蔵大を経て、2019年に三菱自動車岡崎に入社し、7年目の25年は飛躍のシーズンとなった[写真=松村真行]
168cm70kgと小柄で、球速もほとんどが130キロ台。三菱自動車岡崎の入社7年目エース・秋山翔はひとたびマウンドに上がれば、試合を支配する。準優勝を遂げた2025年の都市対抗では先発2試合で防御率0.56、敢闘賞に当たる久慈賞を受賞した。9月の第31回BFAアジア選手権(中国)では、先発、救援で連覇に貢献。巧みな投球術、ゲームメーク能力の高さが注目されている。
一発勝負のトーナメントを勝ち抜く上で重宝されるのは、ハマったときの最大値よりも安定感や再現性の高さ。秋山はこの水準が非常に高い。
「昨年ぐらいから調子の良い日が少ないんです。それでも球種、バリエーションが多いので、その中でストライクが常に取れるようになったのは、一つの成長かなと思います」
球速はそこまで求めていない。
「テークバックもあまり大きくないので、相手打者はタイミングが取りづらそうだなというのもあります。好調時は140キロ中盤が出たんですが、昨年ぐらいから全然、スピード出なかったので、自分のできることやるしかないと考え方を転換しました。育成段階の投手であれば(球速を)求めてしまうと思うんですけど、多くの大会で起用してもらっているので、責任を持ってやらないといけないわけです。持っている技術を最大限に出すと、割り切りました」
初見の打者は大苦戦
25年の社会人日本選手権1回戦(対日本製鉄鹿島)は救援登板。1点リードの終盤2イニングを無失点に抑えた。「ブルペンの状態が良く、初見に近いバッターが相手でしたので、点数とかは気にせず、とりあえずストライクを投げようと思っていました。鹿島さんには投げた経験がなかったので、おそらく相手さんも分からなかったと思います。映像だけでは、分析できない部分もある。ただ、東海地区が対戦チームであれば変わってきます。より丁寧に行かなきゃいけないとこなんですけど、この試合では結構、大胆な感じで投げられました」。冷静なマウンドさばきで、4対3の展開を締めくくった。
大卒同期入社の
阪神・
中野拓夢はHondaとの2回戦を前にしたレジェンド始球式に登場。先発した秋山につなぎ、7回途中1失点と力投した。チームは延長10回タイブレークでサヨナラ勝ち(2対1)し、8強に進出した。中野はこう明かす。
「ずっと岡崎のエースとして投げ続けているというのは、すごいと思います。予選とかも見ていますし、そこで秋山が投げていて抑えていたら、自分もすごく刺激をもらえるんです。社会人野球を代表するようなピッチャーになってほしいなと思います」
三菱自動車岡崎はNTT東日本との準々決勝で敗退(秋山の登板はなし)も、25年は確かな足跡を残した。秋山自身の向上心も尽きない。
「個人的には、良い1年だったかなと思います。でも、悔しさも残る部分もあったので『もっとやりたい』という気持ちがさらに強くなったので、来年(26年)も頑張りたいという気持ちです。相手チームからしたら『ああ、秋山。嫌だな』と思われたり、一方で味方からしたら『秋山なら大丈夫』と、スタンドからも信頼してもらえるようなピッチャーになりたいです。1年間の中でムラがまだあるんで、そこを常になくすようにやっていきたいなと思います」
26年4月で30歳。ベテランの域へと入っていくが、秋山の投球術はさらに進化を遂げ、悲願の都市対抗制覇へと導く。(取材・文=小中翔太)