
沖縄電力はエイジェックとの1回戦、3時間35分に及ぶ激闘の末、惜敗した[写真=高野徹]
沖縄の風と、その風土に込められる想いが詰まった指笛が、今夏の東京ドームには広がった。2年ぶりの本大会出場。九州二次予選で第1代表を射止めた沖縄電力(浦添市)は、第97回都市対抗野球大会での「悲願の1勝」に手応えを感じながら、エイジェック(小山市)との1回戦に挑んだ。
14年ぶりにユニフォームを着て今シーズンから指揮を執る野原毅監督(沖縄水産高)の下で投打に磨きがかかった「オキデン」が、割れんばかりの声援を受けて序盤から躍動する。17年目を迎えた田場亮平(前原高)のソロアーチから始まり、石原結光(沖縄大)の右前適時打、13年目である宮國汰都(宮古高)の中前適時打、さらに川端琉一朗(上武大)の犠飛で計4点を奪ったのは2回裏だ。トヨタ自動車(豊田市)に0対1で敗れた第95回大会の1回戦を思い起こして「2年前とは違い、先行してウチの形ができた」と言うのは野原監督。一気呵成(かせい)に攻め立てるその姿に、勝利への熱量を感じた。
3回表に先発の新垣瑠依(日本文理大)が1失点、6回表に、JR九州からの補強選手である稲山拓峰(桃山学院大)と三番手で登板した當山昇平(九州共立大)が3点を失って同点。さらに8回表に2点を勝ち越されて劣勢となるが、今夏の沖縄電力は違った。9回裏、一死から宮國がショートへの内野安打で出塁すると、三番に座る川端が起死回生の2ランを放って同点とする。なおも、二死から田場が右中間へ二塁打。続く山城裕飛(富士大)の右前安打で二塁走者の田場がホームを狙うが、エイジェックの右翼手・草野里葵(帝京大)の好返球の前にサヨナラ勝利が消える。それでも、土壇場で見せた底力。勝利まであと一歩と迫った攻撃力に、九州第1代表の意地を見たような気がした。
惜敗も価値のある試合
タイブレークに突入した延長10回表に無死満塁から2点適時打を浴びてリードを許す。その裏の攻撃では満塁の好機を築くもホームは遠く、最後は力尽きた。沖縄電力として、そして沖縄県勢としてもなし得ていない都市対抗の勝利を、今夏の東京ドームでもつかみ取ることができなかった。
「外野のスタンドまでお客さんが入ってくれて、ありがたかった。勝って感謝の気持ちを伝えたかったんですけど……。創部34年目の今年、勝利を挙げることはできませんでしたが、本当に皆さんに感謝したいと思います」
3時間35分に及ぶ死闘。3回裏から7回途中まで、エイジェックの谷内隆悟(同大)の前にわずか1安打に抑えられて追加点を挙げられなかったことを野原監督は悔いる。「ああいう投手を攻略しなければ全国では勝てない」とも指揮官は言う。無論、負けた悔しさを選手一人ひとりがかみ締める。
「9回裏にホームランで同点に追いつき、本来ならば勝たないといけない試合だった。ただ、あそこまで追い上げられたことを考えれば、価値のある試合だったと思います」
野原監督が東京ドームで残したその言葉は、近い将来の「1勝」を予感させるものだった。(取材・文=佐々木亨)