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第51回社会人野球日本選手権

日産自動車が復活2年目で15大会ぶり出場 新たなフェーズを迎えた名門

 

セガサミーとの代表決定戦を6対4で制して、17年ぶりの本大会出場。1回戦では昨年の優勝チーム・ヤマハと対戦する


 第51回社会人野球日本選手権の関東代表決定戦に挑んだ日産自動車は、東京ガスの前に屈した。1回裏に犠飛で先制点を奪われると、4回表に一時は勝ち越しに成功するも、直後の4回裏に一挙5点を失って戦意を断たれる。7回裏にも1点を加えられ、ゲームを支配されるままに2対7で敗れた。試合後、日産自動車の伊藤祐樹監督(福井工大)は「落ち着きがあり、どっしりとしていた」と東京ガスの強さ、その試合巧者ぶりに脱帽しながら、言葉を加えた。

「代表決定戦を越えられないという現状……。勝ち切る強さが、まだないのかなあ、と。ただ、明日もしっかりと準備をして臨みたい。プレッシャーと向き合う中で、選手個々が壁を越えられるか、ですね」

関東代表決定戦ではスタンドからファンが大声援を送った


 2009年の活動休止から16年ぶりとなる25年に復活を遂げた日産自動車は、何度となく壁に跳ね返されてきた。1959年創部(2010〜24年は活動休止)の野球部は都市対抗優勝2度、日本選手権優勝1度を誇り、歴史の深い名門チームだ。復活後のユニフォームは、日産のコーポレートカラーで、活動拠点となる横須賀市の市章にも使われるブルーを基調としたオールドタイプの型に。かつて都市対抗と日本選手権で優勝した際のデザインで、胸にはバットをつかんで飛び立つ青い鳥。野球部の創部年に発売され、横須賀市追浜工場で長きにわたって量産された日産のレジェンドカーである「ブルーバード」が刻まれている。復活を果たした名門チームに寄せられる期待は大きかった。熱い思いを一身に背負って新たな船出を切ったが、強豪チームがひしめく都市対抗の西関東、そして、日本選手権の関東地区で、「あと1勝」まで行きながら全国の切符を逃してきた。

高かった「全国の壁」


 25年の都市対抗西関東二次予選では、第2代表決定戦で敗れた。約3200人の従業員やファンが詰めかけた横浜スタジアム。4回裏に石飛智洋(天理大)の右中間二塁打、宮原光夫(創価大)の右前安打で同点に追いつく接戦を演じるも、最後は5点差をつけられて東芝に屈した。同年秋の日本選手権予選では、関東代表決定戦で敗れた。勝てば本大会出場が決まる大一番で、Hondaの前に屈する。復活1年目を振り返り、伊藤監督はこう語ったものだ。

「守備でも攻撃でも、何もないところから自分たちのスタイルをつくっていく。自分たちから試合をつくっていくというものが欲しい。今はチームとしての完成度を上げていかなければいけないと思っています」

 迎えた復活2年目の今シーズンは、多くの社会人野球関係者が口をそろえて「日産は強い」と言うように、間違いなくチームの完成度は高まった。都市対抗西関東二次予選では、復活後初となる第1代表決定戦に進出。17年ぶり30回目の本大会出場を狙う一戦では、初回から小刻みに失点を重ねられる苦しい展開を強いられたが、試合中盤に2点を返し、9回表には石飛の中越え2ランが飛び出す。だが、最後は1点差で東芝に敗れて、悲願は達成されなかった。三菱重工Eastとの第2代表決定戦では、一時は1点差に詰め寄ったが、最後は6点差をつけられて敗戦。一大会で2度の代表決定戦に進むも、またしても「全国への壁」を乗り越えることができなかった。

効果的な得点に「強さ」


 そして、今秋の日本選手権予選である。東京ガスとの代表決定戦に敗れた日産自動車は、敗者復活となる“2度目の代表決定戦”に挑んだ。10月5日、東京ガス戦敗退直後の伊藤監督はこう語っていた。

「素晴らしい報告ができるように、やるべきことをやるだけです」

 翌6日の等々力球場。最後の大一番は、今シーズン限りでの廃部が決まっているセガサミーが相手だった。試合が動いたのは2回裏だ。日産自動車は、二死一塁から七番に座る比嘉久人(共栄大)の左越え二塁打で先取点を奪った。3回裏には、九番・川副寿来(国士舘大)の左前安打を起点に、相手の守備の乱れもあって無死満塁と攻め立てる。その好機で、角田蓮(駒大)が右前安打で2点目。さらに、石飛が押し出し四球をもぎ取り、一死から六番・田中雄大(福岡工大)が犠飛を放って得点を重ねる。序盤だけで4点をリードした日産自動車が、試合の主導権を握った。

 7回裏には、川副の左翼線二塁打でチャンスが生まれると、宮川怜(愛知工大)が犠打を決めて一死三塁。主将の石毛大地(筑波大)が、前進守備の二遊間を抜ける中前安打で1点を追加。8回裏には、梅澤唯冬(中央学院大)の右前安打を起点に、比嘉の左前安打でさらに1点だ。今予選を振り返り「1戦目(対茨城トヨペット)、2戦目(対明治安田)ともにわれわれのペースで戦えた」と語っていたのは伊藤監督。その流れを再び呼び覚まし、効果的に得点するその姿には「強さ」を感じた。

1回戦の相手は前年優勝チーム


 投げては先発・領家佑馬(城西国際大)の粘投だ。5回表にソロアーチ、7回表は二死から3連打で2失点。9回表は、負ければ21年間の部史が終わるセガサミーの粘りの前に1点を返され2点差に詰め寄られるが、最後までマウンドに立ち続けた。6対4。120球で完投した領家を「よく頑張ってくれた」と労った伊藤監督が、言葉を紡ぐ。

「前の試合(東京ガス戦)は、選手を代えたところでうまくいかなかったこともあったので、今日は、(ベンチが)余計なことをしない日かなと思って、試合を見つめていました。領家もそうですが、選手みんながよく頑張りました」

入社2年目のエース・領家はセガサミーとの代表決定戦で4失点完投。日本選手権でも好投が期待される


 東京ガス戦で相手に感じた「落ち着きがあり、どっしりとした野球」が「ようやく、できるようになりました」と、伊藤監督は表情を緩めた。

 25年の活動再開後、日産自動車にとっては社会人野球の二大大会における初の本大会出場である。日本選手権は15大会ぶり17回目の出場。歴史を紡いできた名門チームが、長いブランクを経て全国の舞台に立つ。

「そこで初めて、本当の復活と言えるのかもしれません」

 伊藤監督はそう語り、野球部が新たなフェーズを迎え、確かな一歩を踏み出す瞬間を思い浮かべている。1回戦の相手は前年覇者・ヤマハ。全国に再び、名を轟かせるには最高の相手だ。(取材・文・写真=佐々木亨)

「ミスター日産」と言われた伊藤監督は現役時代、自チームだけでなく、日本代表の主将も歴任。勝負の厳しさを知り尽くしている。復活した名門チームを再び全国舞台へ導いた

アマチュア野球情報最前線

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