コーチからの助言を愚直に続け、悔しさも糧に指名を勝ち取った。地元球団で恩返しを果たす。 リポート=高田博史 
仮契約後の会見での中日・野本スカウト[左]と菊田[写真=愛媛マンダリンパイレーツ]
ハマった取り組み
11月21日に、中日からの指名あいさつと仮契約を終えた
菊田翔友(育成2位指名/元愛媛)は、その2日後、愛媛を発った。すでに実家のある名古屋市に戻っている。
「今日、ちょうどジムを契約しに行ってきたんです。1カ月だけ」
これから1カ月間、地元でトレーニングする。この冬は上半身も下半身もしっかり鍛えたい。バネを強くしたいと、瞬発力系のメニューにも力を入れる。
いまから2カ月前の9月上旬、菊田を取材している。ドラフトを前に「スカウトにはストレートとフォークを見てほしい」と話していた。
平井諒コーチ(元
ヤクルト)から「いま、真っすぐとフォークがいいんだから、変えずに続けていけばいいんじゃない?」と言われ、ひたすらそれを続けている。
その後もクローザーとしてマウンドに登り続け、勝ち試合を落とすことなく今シーズンを終えた。菊田自身、中日・
野本圭スカウトから獲得に至った理由を聞いている。
「『真っすぐが主体だけど、フォークでカウントが取れて、空振りも取れる。だから指名した』って言われて。うまくハマったっていう感じですね」
さっそく次の課題も与えられている。もちろん、最初に越えなくてはいけないハードルは支配下登録だが、将来的には先発での登板も視野に入れる。
実現するためには、実戦で使える球種をもう1、2球増やさなくてはいけない。まずは任されたところで全力を尽くすつもりだ。
「悔しい思いをしてるんで」
高卒で愛媛に入団し、2シーズン目でNPBへの切符を勝ち取った。だが、1年目は練習量の多さについていけなかった。特にきつかったのがランニングメニューだ。ランが終わると、もう次のメニューをこなす体力が残っていない。当然、満足できるような成績を残すことはできなかった。
昨年のオフ、地元・名古屋に戻り、筋力アップに努めている。今シーズンも、わざわざ徳島にあるジムまで足を運び、トレーニングメニューを作ってもらっていた。自発的に取り組んだことが、2年目の飛躍へとつながった。
「ちょっとずつ環境に慣れて。もう2年目で、やらないといけない! っていう気持ちが自分の中で強かったですね。(昨年)悔しい思いをしてるんで……って感じですかね」
来シーズンも、これまでやってきたことを続ける。多くの人たちから声援を受けるなか、愛媛・
弓岡敬二郎監督(阪急・
オリックス)からの激励の言葉は、「とにかく頑張って。こっちよりきついことはないわ!」だった。
愛媛を発つ前、スポンサーへのあいさつ回りをしながら感じたことがある。
「『頑張れ、頑張れ』って言われるんで。その期待に応える、じゃないですけど、その分まで。(NPBに)行けなかった人の分まで頑張ろう。頑張らないといけないな、と思いましたね」
四国リーグでもまれ、野球選手として以上に、人として大きな成長を遂げている。
PROFILE きくた・とわ●2003年9月25日生まれ。184cm90kg。右投右打。AB型。愛知県出身。享栄高から愛媛に入団。2年目の今シーズン、最速150キロのストレートと2種類のフォークを操り、クローザーを務めた。24試合0勝0敗1ホールド6セーブ。防御率3.65(投球回24回2/3)、26奪三振、奪三振率9.49、WHIP1.01。中日より育成2位で指名を受けた。