右中間を抜く当たりを打った打者は、二塁を回って三塁に向かいかけましたが、三塁コーチが制止するのを見て、二塁ベースに戻りかけました。そのとき帽子が飛んだので、戻りながらタイムを要求し、審判もそれを認めましたが、二塁ベースに着く前にボールを持った遊撃手にタッチされました。
しかし、塁審はタイム中だからといって、このアウトを認めませんでしたが、正しい処置でしょうか。 明らかに審判のミスで、本来なら当然、アウトが成立します。野球規則5.10には「審判員が“タイム”を宣告すればボールデッドとなる」とありますが、いつでも宣告できるものではありません。同規則の(h)にも「審判員はプレイの進行中に“タイム”を宣告してはならない。ただし、本条(b)項、または(c)項の[付記]に該当するときは、この限りではない」とあります。
ここでいう(b)とは「ライトの故障のために、審判員がプレイを見るのに困難となるか不可能となった場合」であり、(c)は「突発事故により、プレーヤーがプレイできなくなるか、あるいは審判員がその職務を果たせなくなった場合」に限られるのです。走者が二塁ベースに戻ろうとするのは完全にプレイ中であり、そこでタイムを要求するのも認めるのも常識外ですが、それがプロ野球で起きたことがあります。
だいぶ昔の話で、67年6月1日に東京スタジアムで行われた東京(
ロッテの前身)-阪急戦の8回裏、東京の攻撃のときです。
無死で左中間を抜く当たりを打った
西田孝之は、二塁を回って三塁をうかがいかけましたが、コーチに制止され二塁に戻ろうとしました。すると、その途中でタイムを要求し、それにつられて二塁塁審も両手を上げて「タイム」を宣告したのです。その直後に二塁ベースカバーに入った
大熊忠義一塁手が帰塁する西田にタッチしましたが、アウトは成立しませんでした。