打者は左翼へ大きな飛球を放ちましたが、左翼手がよじ登り、グラブを持つ腕いっぱい伸ばしてこれをキャッチ。しかし、次の瞬間によろけた左翼手はスタンドに転落してしまいました。審判員はフェンス上で左翼手が飛球をグラブに収めたのを確認し、アウトを宣告しましたが、攻撃側の監督がボールをつかんだままスタンドに落ちたのだから、捕球ではなく、本塁打だと抗議です。この場合、打者はアウトでしょうか、本塁打となるのでしょうか。 まれに目にするプレーです。問のケースでは審判員が左翼手のフェンス上でのダイレクト捕球を確認し、アウトを宣告しているので(完全捕球)、その直後にスタンドに転落しても、本塁打となることはありません。“打者アウト”を定めている野球規則5.09(a)の(1)には基本的な考えとして
「フェア飛球またはファウル飛球(ファウルチップを除く)が、野手に正規に捕らえられた場合」に野手はアウトになると定められています。
そして【原注1】には
「捕球とは(中略)手またはグラブでしっかりと受け止め、かつそれを確実につかむ行為」とあって、審判員が“捕球”を認めた瞬間に打者はアウト、問のケースではスタンドへの転落はその後のプレーということになります。
ただ、1984年以前の“打者アウト”を定めた野球規則2.15の【原注】には「野手はフェンス、手摺(てすり)、ロープなど、グラウンドと観客席との境界線へ、身体を伸ばして(身体の大部分は競技場内になければならない)飛球をとらえることは許される」とあり、カッコ内の一文が捕球後のスタンド転落=アウトではないと誤解の元となることから、85年以降の規則ではカッコ内の文章は削除されています。また、上記の規定は現行の規則では
「グラウンドと観客席との境界線『を越えた上空へ』、身体を伸ばして~」と、当時からは『』部分が改正されています。[文責=編集部]