
タッグをかいくぐりセーフを確信した野間[写真中央]は、アウトを宣告され困惑の表情
【問】セ・パ交流戦の広島対楽天戦(6月13日・マツダ広島)でのこと。6回裏無死二塁で、野間峻祥選手(広島)が一塁への打球を放った際、一塁手のタッグをかいくぐって駆け抜けたかのように見えましたがアウトの判定。その直後に一塁・岩下健吾審判は両手を大きく前に差し出し、ラインアウトだと示しました。ただ、画像を見ると走者の両足はともに3フットレーンの中に納まっています。以前にこの欄で、ここは「打者走者の安全地帯で、この中を走っていればアウトにはならない」と書かれていたように思うのですが。 【答】3フィートオーバーでのラインアウトと3フットレーンの外側を走る守備妨害でのアウトは、言葉が似ているために混同されがちですので、もう一度整理しましょう。
まず前者は打者のみならず、すべての塁の走者に適用されます。つまり、走路(走者の位置と塁を結んだ直線)から3フィート(約91.4センチ)以上タッグをかいくぐろうと離れた場合に
「ラインアウト」とされるのです(5.09.b.1)。
この場面で広島の
新井貴浩監督は即時にベンチを飛び出し抗議をしましたが、これは残念ながらリクエスト対象外のプレーです。3フィートを超えていたか否かは審判の判断に委ねられます。なぜならば、タッグをかいくぐろうとした走者の起点はどこか、実際に離れた距離の数値はどうだったのか等々、リプレイ検証をするにはあまりにも不確定な要素が多いからです。
今回のケースを確認してみると確かに野間選手の足は3フットレーン(一塁線後半部分にある四角いゾーン)内にあるように見えます。しかし、ここが打者走者の安全地帯であるのは、あくまでも送球に対する守備妨害が適用されない、ということです。
打者走者がフェアテリトリーを走っていると、本塁近辺から一塁への送球ではそれを捕球する野手の妨害となりがちです。よって打者走者は必ずやこの中を走りなさい、というルールなのです(5.09.a.11)。
つまり通常の野手の打球処理やタッグ行為においては、3フットレーン内を走っていればアウトにはならない、ということではありません。当然ですが、このレーン内で野手が守備行為をしていれば打者走者は避けなければなりませんし、同様にラインアウトはこの中でも発生します。
指導者も選手もこの2つのルールは似て非なるものだ、と認識する必要がありますね。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。