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山崎夏生のルール教室

公認球の管理は審判団の管轄 品質管理はその範囲外に/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

試合開始前に出場審判員によって準備を整えられた100以上のボールが投手の手に渡り、ゲームで使用される


【問】開幕してから2カ月以上が経ちますが、今季は本塁打数が激減し、各チームからも「今年のボールは飛ばない……」という不満が噴出しているようです。選手会では各球団の聞き取り調査を始めているとか。実際はどうなんでしょうか? NPB公認球の管理は審判団に任されている、という話を聞いたことがあるのですが。

【答】確かにNPB公認球の試合前の保管と管理は審判団に任されていますが、品質管理はまったくの管轄外です。ただ、実際に昨年の1試合平均本塁打数1.46本から0.97本(5月14日時点)と35%近くも減少しており、選手の肌感覚として飛ばないなあと感じているのでしょう。

 私がパ・リーグ審判になったころは各球団により使用球が違っていました。当時は9社が参入していて、毎月1回、後楽園球場の薄暗い用具保管室に数百ダースのボールが搬入され、その1個1個をセ・パの若手審判6人で専用のゲージと天秤量りで数時間をかけ、大きさと重さの検査をしていたものです。実際に当時のボールは品質のばらつきもあり、かなりの個数が規格外として落とされました。近年は生産技術向上に伴い規格外製品も激減し、その検査は各社に任されるように。2011年以降は微妙な手触りなどの違いを解消するため、ミズノ社のみに統一されました。これがいわゆる「統一球」です。今季も打球の飛距離を左右する反発係数は0.4134を目標値として、そのプラスマイナス0.01以内に収められていることは間違いありません。

 ただ13年に今回とは逆の「飛ぶボール」が話題になったことがあります。そのときは実際に反発係数を上限に近いものに仕様変更をしたのですが、それをきちんと公表しなかった責任を問われコミッショナーの退任という事態にもなりました。

 今季のボール騒動の真実はまだ解明されていません。反発係数ではなく投手力の向上や長距離打者の減少、あるいはバットの品質かもしれないし、単なる春先の珍事なのかも……。結論はもう少し先になるでしょう。

 ちなみに公認球は試合の3時間ほど前に10ダースが審判室に届けられます。この時点ではアルミホイルに包まれビニール袋で密閉されており、湿気を防ぐためにボールの表面には薄くパラフィンが塗られています。それを出場審判員が専用の砂で揉み落とし、試合開始まで厳重に保管します。雨天の場合などは用具担当者に追加要請をし、時には15ダースほどを使うこともあります。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社.東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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