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山崎夏生のルール教室

白スパイクの審判員が登場!? 異常な暑さに審判も対策/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

塁審用のシューズ[写真左]とガードが着けられた主審用の2足を用意する必要がある[写真=筆者提供]


【問】6月15日に大阪府内で行われた高野連の審判研修会で、今夏の甲子園での暑さ対策として白色スパイクの着用を試した、という報道がありました。メーカーの試験では黒と比較すると白は内部温度で約10度、表面温度では約20度も低かったそうです。ならばすぐに変更すれば良いと思うのですが、今までどうして審判スパイクは黒でなければならなかったのですか? ちなみに高野連の選手は2020年の春の選抜大会から白スパイクの着用が認められていますよね。

【答】公認野球規則ではスパイクの色についての規定はありません。もちろん審判も然りですが、ユニフォームの一部ですからチームも審判団も同一色であることが大原則です。ただ球審用は捕手に踏まれたり、ファウルが当たることも多々ありますからつま先は安全靴のようにガードされています。逆に塁審は軽快な動きが必要ですから、ごく軽量の素材で作られています。

 では、なぜ審判スパイクは今まで黒に限定されていたのかというと、黒は審判の基本色だからです。法廷に立ち会う裁判官や検察官、弁護士などの着用する法服の色は黒と定められています。黒はどんな色にも染まらない、という彼らの公正中立さを象徴しているのです。これは審判も同じで、夏場の一時期を除いてNPB審判ユニフォームは黒であり、帽子も下に着るTシャツや靴下でさえ黒に統一されています。スラックスも黒に近いチャコールグレーです。ただパ・リーグでは1990年代初頭の数年間は紺のスラックスに見映えがするよう、白のスパイクを着用した時代もありました。

 白のスパイク着用で懸念されるのは、まずはボールと同一色なので選手の目障りになるのではないかということ。そして土のグラウンドでやることの多いアマチュア球界ではすぐに泥まみれとなるので手入れが大変なこと。さらに費用面でも球審用・塁審用と最低2足は必要ですし、各連盟によって黒と白の使い分けを強いられる可能性もあることでしょうか。ならば黒に統一しておけば、どのカテゴリーの試合でも使用できるというメリットにつながります。

 ただ近年の異常ともいえる暑さ、さらに炎天下での人工芝球場となれば試合後には低温火傷のように足の甲が真っ赤になることさえあるのです。もはや審判の身の安全のためにも黒に限定、という時代ではないでしょう。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社.東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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