
7回途中に雨天コールドとなった試合。「27分」の中断後の試合終了には内規による判断があった
【問】6月28日のロッテ対オリックス戦(ZOZOマリン)は試合前から雨が降っていましたが強行開催。開始後も雨は止まずに、結局7回裏二死一、二塁でコールドゲームが宣告され、オリックスは3対4で敗れました。中断時間は27分で、この判断にオリックス首脳陣は激怒し三塁ベンチ裏で審判団に詰め寄ったそうです。公認野球規則4.03(e)には「少なくとも30分を経過するまでは、打ち切りを命じてはならない」と書かれているので、納得できませんよね。 【答】「お天道様には勝てない」という言葉がありますが、年に何度かはこういった状況となり、審判団は苦渋の決断を下さねばなりません。雨風の心配のないドーム球場はこういった点で安心できます。
まず、試合の開催についてですが開始前は主催球団、開始後は審判団の判断となります。開始後とは実際に球審が「プレーボール!」と宣告した時点を指します。ですからこの日は18時開始予定が41分遅れで始まったのはロッテ球団、コールドゲーム宣告は審判団の判断でした。
ここで「大人の事情」と言うと語弊があるかもしれませんが、時にはファンの望みや興行優先の強行開催もありうるのです。例えば数年に1度しかない地方球場での開催、あるいはイベント企画、オールスター戦、シーズン後半の日程消化優先の連盟管理試合などです。もちろん天候状態が最優先されるべきですが、こういった内部事情は各球団の暗黙了解事項であり、お互い様だという認識もあります。
ただ、実際に雨中で戦う選手たちはコンディション不良や安全管理に不満を持つことが多々あります。ましてや試合後半の僅差のスコアともなればその勝ち負けが最終順位にもつながりますし、審判団も両チームにとっての最善策を探ります。まず中断となればすぐに控室で最新版の雨雲レーダーを見つつ、再開できる時間帯を予測します。もちろん両チームの思惑は完全にシャットアウトし、グラウンドキーパーとも相談します。
今回なぜ30分待たずに27分でコールドゲームにしたのかと言えば、それは公認野球規則よりもプロ野球規則細則(内規)が優先されたからです。その中には「降雨が激しく、試合続行が不可能と思われた時には、30分を待つことなく、試合を中止することができる」と書かれています。当日の降雨状況からして、やむなき措置だったのでしょう。実際に雨脚はさらに強くなりました。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社.東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。