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山崎夏生のルール教室

同じプレーに二度の抗議!? 二転三転してしまった経緯とは/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

二度の抗議が行われたプレーだったが、オリックス・中嶋監督のリクエスト前に審判団での自主判断によるリプレイ検証を行うべきだった


【問】9月11日のオリックス対ロッテ戦(京セラドーム)では同じプレーに対し両軍監督が抗議に出る、という珍しいシーンがありました。2回表一死一、二塁からロッテの打者がレフトへの打球を放ち、三塁審判は最初に両手を広げノーキャッチ、その後、右手を上げてアウトへと変更。しかし二塁手はノーキャッチだったと判断し、レフトからの送球を捕球し、まずは二塁塁上に居た二塁走者にタッグし、その後に二塁を踏みました。

 二塁審判も両走者を指差しアウトを宣告して併殺成立。この判定にロッテ・吉井理人監督が抗議すると審判団が集まって協議をし、レフトへの打球はその時点でキャッチと変更されていたので、正規の帰塁だった両走者ともアウトではなく、打者走者のみアウトとし二死一、二塁で再開。すると今度はオリックス・中嶋聡監督から打球判定へのリクエストがあり、リプレイ検証の結果、やはりノーキャッチだったので併殺となり、吉井監督が再度の抗議。二転三転し結局は最終判定どおりの併殺でしたが、混乱の原因はどこにあったのでしょうか?


【答】まずは状況の整理から。このケースですとレフトへの打球の判定責任は三塁審判にあり、内野内に位置する二塁審判が二、三塁上での判定を任されます。ノーキャッチならば全走者がフォースの状態で進塁義務がありますから、いかに二塁塁上に居ようとも二塁走者はタッグされればアウト、さらにそのあとに送球を保持した野手が二塁を踏めば、一塁走者もフォースアウトとなり併殺が成立します。もしもこの手順を誤り、野手が先に二塁に触塁し一塁走者をアウトにすればその瞬間に二塁走者は進塁義務がなくなるので、二塁塁上でタッグされてもアウトにはなりません。

 さて、審判の三大タブーは[1]ルールの適用ミス [2]ジャッジをしない [3]曖昧なジャッジであり、今回はまさにこの[3]でした。選手は審判の判定を見て動くのですから大混乱は必至となります。審判団が協議をしてキャッチとしたのはその確信があったからなのか、あるいは攻撃側の不利益を取り除くためだったのかは不明です。ただ、今は何よりも正しい判定が求められますから、まずは自主判断によるリプレイ検証をすべきでした。またリクエストはチームの正当な権利ですから受け入れざるを得ず、その検証結果が打球はノーキャッチだった、という事実が示されました。そのあとの抗議は自動的に退場となりますが、今回はインプレー中に塁審の判定変更があったという特殊なケースがゆえに、抗議ではなく、その複雑な経緯の説明を求めたのでしょう。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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