
キャンプのブルペンでは、キャッチャーの後ろに審判員が立っている姿が見られる。ここで判定の量をこなし、正確な判定へとつなげていく
【問】いよいよ本拠地でのオープン戦も始まり、3月28日にはセパ同時開幕ですね。以前の当欄でNPB審判の方々のオフのルール勉強やトレーニング方法、そしてキャンプ中の実戦練習のことなどが書かれていました。開幕に向けての調整はベテランと若手は同じなのですか? また、選手のように一・二軍が明確に分けられているのですか? 【答】クルーチーフ(今季は試合では同様の役割を任う副審判長、関西統括ディレクターを合わせ8人)や一軍で1000試合以上も出ているようなレベルの審判でしたら紅白戦やオープン戦は調整段階。ベテラン選手同様にある程度は自己裁量に任されていますが、10年目以下の若手にとっては開幕までがアピールの場です。みんな、シートバッティングや紅白戦、練習試合などでは先を競ってマスクをかぶります。選手は打率や守備率、防御率などの数字を持っていますが、審判の評価は最高でも最低でも99点が基準点となるのです。いかにマイナス点を小さくするか、が肝心です。
今季は現役56人体制ですが、一軍レギュラーとみなされるのは30~35人程度。選手は高卒ルーキーでも開幕一軍はありえますが、審判はまずは研修審判として独立リーグへ派遣されます。そして育成審判として3年、その後も3~5年程度の二軍修行を経て、一軍昇格には10年のキャリアが必要です。見る力より、何よりも経験値がものをいうからです。一軍の舞台で堂々と裁くには最低でも二軍戦で1000試合程度。これだけの数をこなせば、実戦で起こりうるプレーのほとんどを経験できます。
2011年にセパ審判部が統合されて以降はほぼ完全クルー制となっています。まずは責任審判を担うベテランのクルーチーフとサブ。この職務は日本シリーズ出場経験豊富な実力者に任され、そのもとに中堅2人、そして10年目以下の若手という5人制です。もちろん試合出場は4人で控えが1人。ローテーションは三・二・一塁から球審、そして控えという順番ですから、3連戦初戦を見れば以降の配置も察することができます。このクルーは7組ありますから、6カード毎に3日間の休養が与えられるのです。心身ともに相当にハードなので絶対に必要なこと。審判は1回表から9回裏までフル出場するので、選手の2試合分に匹敵する、というのが持論です。
さて、今季の開幕戦の球審は誰か? 若手は誰が開幕クルーに登用されているか? こんな配置を見るのも楽しみの一つですね。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。