
杉山の投じたフォークがワンバウンドすると、海野はこれを捕球できず、ミット、腕と当たって高く跳ね上がると、写真の直後にボールは左肩口からプロテクター内に入り込んだ
【問】開幕早々にこんな珍プレーがありました。3月30日のソフトバンク対ロッテ戦(みずほPayPay)で、4対4の8回表二死三塁からソフトバンクの杉山一樹投手がワンバウンド投球。それを捕球しようとした海野隆司捕手のミットに収まらず、なんとプロテクター内に入り込んでしまったのです。で、球審は三本間にいた走者を生還させ、これが決勝点となりました。すぐにボールを取り出せばプレーも可能ですからナッシング(成り行き)ではないのですか? 【答】ソフトバンクファンには納得のできない裁定でしょうが、やむなしです。まずは正規の捕球の定義ですが、5.09(a)(1)には
「(前段略)帽子、プロテクター、あるいはユニフォームのポケットまたは他の部分で受け止めた場合は、捕球とはならない」と明記されています。で、投球の場合は5.06(c)(7)に
「捕手のマスクまたは用具、あるいは球審の身体やマスクまたは用具に挟まって止まった場合-各走者は進む」とありますので、審判団のこの処置で正しいのです。
実はまったく同様のケースが2年前の開幕早々にもありました。2023年4月8日の
オリックス対
日本ハム戦(京セラドーム)で、このときは無死満塁でしたから、各走者は1個ずつの進塁で得点1、無死二、三塁でのプレー再開となりました。
では、この投球が三振や四球ならばどうか? やはり正規の捕球ではありませんから打者は安全に一塁に進塁できます。もちろん各走者にも1個の進塁が認められます。ですから捕手はきついかもしれませんが、体とプロテクターをできるだけ密着させるか、あるいは隙間を埋められるような型に改良するしかありません。
ちなみに打球や送球の場合も正規の捕球ではありませんからボールデッドとなりますが、各走者の進塁は審判の判断に任されます。例えば投手がゴロやフライを取り損ねて打球がユニフォームの中に入ってしまった場合、打者走者には1塁が与えられます。その結果、押し出される走者ならば次塁への進塁は認められますが、例えば三塁走者のみでしたらこの状況では得点できなかったと判断されれば三塁にとどまることもあるのです。要は正規の捕球でなければまず審判はタイムをかけボールデッドとしますからご安心ください。その後の処置をNPB審判が間違えることは絶対に(きっと?)ありません。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。