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山崎夏生のルール教室

話題のトルピード型バット 使用するのは問題ない?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

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NPBでのトルピードバット使用第1号となった源田。これから使用する選手は増えていくか


【問】MLBでは今季の開幕早々からトルピード(魚雷)型バットが話題になっています。ヤンキースでは主力の3選手が使用し始め、開幕戦から本塁打を量産し、チームとしても開幕6試合で22本塁打という驚異的数字を叩き出しています。バットの先端が細く、魚雷のような形状はルール的には問題は無いのでしょうか?

【答】まず公認野球規則3.02でのバットは「なめらかな円い棒であり、太さはその最も太い部分の直径が2.61インチ(6.6センチ以下)、長さは42インチ(106.7センチ)以下が必要である。1本の木材で作られるべきである」と定義されています。よってこの規格に反していなければ何ら問題はありません。4月11日に開かれたプロ野球規則委員会でも確認されています。金属バットや竹製バットの使用が認められるのはあくまでも各連盟での内規です。

 ちなみに重さの制限はありませんが(高校生の新規準の金属バットは900グラム以上)、実際は850グラム前後で重心が先端部にあるトップバランス型のバットを使用する選手がほとんどです。かつてはバットの形状にも選手個々の好みによりタイカップ型、すりこぎ型、こけし型、二重グリップ型等々がありました。バットの重みを生かして打球を遠くに飛ばす、というのはもはや迷信。飛距離はスイングスピードに比例すると科学的に証明され、鋭い変化球に対応するためにもバットコントロールのしやすい軽量バットが今は主流となっています。

 実はこの形状のバットは1980年代にSSK社から高校生向けの金属バットで「ウィングフライト」という商品名で販売されていました。女子野球でも愛用者が多かったそうです。非力だったり詰まり気味の選手にはこういったカウンターバランス(重心が手元)が合うのかもしれません。

 4月18日に西武源田壮亮選手がソフトバンク戦(ベルーナ)で、公式戦で初めて使用しましたが、結果は三ゴロでこの1打席のみ。まだサンプル数が少なくその実効性は不明ですが、かなりの選手が練習では試し打ちをしているようです。公式戦で使うバットには必ずNPBの刻印が必要であり、新製品や輸入されたバットは、使用前に審判団が形状の確認をして公認シールを貼る必要があります。これはフランチャイズ球場に常備されており、地方遠征でも審判団は携行します。

 前述したように先端部が細く、バットコントロールもしやすいので多彩な変化球を操るアンダースローには効果的かもしれません。水面下から浮き上がるサブマリンには、トルピードで迎撃、といったシーンも近々見られるかも。きな臭い話ですが(笑)。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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