
プロ野球選手であれば誰もが知っている次の塁を通過した後の帰塁の方法。しかし、ギリギリの状況のプレー下においては忘れてしまい、空過のためアウトとなることが起こる。あの長嶋茂雄氏も3度、これでアウトになっている[写真=BBM]
【問】9月2日の広島対DeNA戦(マツダ広島)で、いわゆる「三角ベース」でのアウトという珍プレーがありました。4回裏一死一、二塁からの右中間への飛球に対し、一塁走者の坂倉将吾(広島)は二塁通過後に右翼手の捕球を見て、大慌てで一塁への帰塁をしましたが、その際に二塁を踏み直さなかったのです。このケースでは明らかに二塁ベースを飛び越していたのですが、塁近辺からの空過の基準を詳しく教えてください。 【答】まず、二塁を通過したか否かの基準ですが、五角形の本塁ベース突端と二塁ベース中心を結んだラインを想定してください。このラインより走者が三塁側に位置すれば通過と見なします。ですから三塁側から一塁へ帰塁するならば、まずは二塁ベースを踏み直し、必ずやこのラインよりも一塁側のゾーンを走らなければなりません。今回のケースでは三塁側から明らかに二塁を飛び越えての帰塁でしたから、アウトもやむなしです。
「三角ベース」と呼ばれるように遊撃手手前あたりから一直線に一塁へ向かえば二塁の踏み直しをしなかったのは明らかですが、厄介なのは塁近辺からの帰塁のケースです。帰塁の一歩目が三塁側にあれば二塁通過地点と見なされます。よって走者は必ずや帰塁の一歩目は一塁側に踏み出すことを心掛けてください。もちろんフィールド内にそんなラインは引いてありませんから、微妙な地点は審判の判断にゆだねられます。
またこのプレーはアピールプレーですので、走者の追い越しのように即時にアウトは宣告されません。野手が空過した塁を踏むか、あるいは当該の走者にタッグをして審判にアピールをしなければならないのです(5.09.c.2・塁の空過)。これを見逃さなかった
林琢真選手(DeNA)と本田英志二塁審判に「あっぱれ!」ですね。
こんな珍プレーは滅多にあるものではない……と思うかもしれませんが、実はかなりの頻度であるのです。NPBでは今回の事案を含めて4年連続で起こっていますし、過去には試合終了の最終アウトや日本シリーズで起きた例もあります。ミスタープロ野球の故・長嶋茂雄氏はなんと3度もやっていますし、マー
リンズ時代の
イチロー選手もやらかしました。もちろんプロ野球選手がこのルールを知らぬわけがありません。全力で塁に戻らねば、と思った瞬間にエアポケットに入ったような心理状態になってしまうのでしょうね。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。