
グラスラインとは写真の緑と茶色を区分する線のことで、ファウルラインから46〜61センチの間と規定されているが、球場によっては1m近くあるところも。MLBでは2024年のOBRの一塁後半の走塁に関してのルール改正に伴い、全球場のグラスラインを統一したという
【問】先月開催されたU-18W杯での日本対アメリカ戦でのこと。延長タイブレークとなった熱戦でしたが、無死二塁からの日本選手のバントを処理した投手の一塁送球が打者走者の背中に当たりました。画像を見ると明らかにスリーフットレーン内を走っていないように見えましたが審判の判定はナッシング。この判定に納得できぬアメリカの監督は守備妨害だと激高し、退場となりました。解説をお願いします。 【答】このプレーを私も動画で確認しました。確かに打者走者は一塁への送球が背中に当たった時には両足ともインフィールド内にありました。で、結論を申すなら「公認野球規則」ならば打者走者は守備妨害によりアウト、「OBR(Official Baseball Rules)」ならばナッシング(成り行き)です。なぜ、同じ野球なのに? と思うかもしれませんが、国により食い違うルールもあるのです。このOBRは世界共通ではなくMLBのルールであり、それをもとに各国の野球事情に合わせたルールが存在する、ということです。公認野球規則でよく見られる【注】「我が国では適用しない」という条文がまさにそれです。各連盟にある「内規」や大会開催要綱などもその類です。
今回、問題になったプレーですが、実は2024年のOBRの改正では一塁後半の走塁に関してグラスライン(内野の芝と土の切れ目)まではOKと緩和されています。しかしNPBでは東京ドームや甲子園など4球場でグラスラインがなく、また地方球場のほとんどにもありません。そして拡大される幅も各球場で46〜61センチとバラつきがあります。よってこの改正ルールの採用は現場での混乱を招くという判断から、我が国では従来通りの判断基準(5.09.a.11)のままとなっています。
後日の会見で、アメリカの監督はU-18W杯の主催者だったWBSC(世界野球ソフトボール連盟)に問い合わせたところ、抗議の正当性を認めてもらえたとのこと。とはいえ、守備妨害に関してはリクエストの対象外であり、審判の判断が全てですから下された判定には従うしかありません。せめて審判団には穏便に質問をする、という態度で臨むべきでした。
ちなみに監督に抗議権が認められていないのは、わが国の高校野球だけ。その権利はきちんとルールとして明記されています(8.02.b・規則適用の訂正要請)。そしてもちろん、過度の暴言や侮辱行為に対してはアマチュア野球でも退場はあります。むしろそれを宣告しないのは審判のルール違反(8.01.d)。毅然たる態度を示した各国の国際審判員諸兄に拍手を送ります。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。