
9月18日の中日対DeNA戦[バンテリン]の3回裏の中日攻撃で、ボスラーの打球がファウルからフェアに変更となり、審判に確認を取るDeNAの三浦大輔監督。裁定を変更する場合、審判員は、走者をどこまで進めるかを含め、すべての処置をする権限を有すると定められている
【問】9月18日の中日対DeNA戦(バンテリン)でこんなプレーがありました。3回裏二死一、二塁からライトフェンスかつポール際に飛んだボスラー選手(中日)の打球はポール下のフェンスに示されている黄色いライン近辺の微妙な地点に当たりました。一塁審判の当初の判定はファウルだったのですが、リクエストによりフェアに変更。打者走者は打球の進路からして二塁打とされたのですが、一、二塁の両走者には得点が認められ2得点、二死二塁での試合再開となりました。打者が二塁打ならば二死二、三塁の1得点とすべきではないでしょうか? 【答】かつては審判の判定は絶対であり、たとえそれが誤審であろうとも「正しい」という前提の上ですべてのプレーが進行しました。ですからこういったトラブルも皆無だったのですが、2018年にリクエスト制度が導入されて以来、年に何度かはボールデッドからインプレーの状態に変更されることがあります。難しいのはこういったケースでの走者の位置でしょう。今回はまさにそれで、重要なのはアウトカウントでした。
この打球は大きな放物線を描いていましたからフェンス際で捕球される可能性もあります。もしも無死あるいは一死ならば走者はハーフウェイかタッグアップの体勢をとったでしょう。ところが二死ならば打球が放たれた瞬間に走者は全力疾走で次塁を目指すはずです。通常の走力を持った選手であればこのような長打となる打球なら高確率で本塁に生還できました。
また、一塁審判の当初の「ファウル」の判定が見えていれば走者も打者も走るのを止めたり、あるいは野手にしても然りで打球処理をしなかったかもしれません。こういった点を考慮したうえでの総合判断をゆだねられるのが審判団なのです。その権限は
「8.02.C・裁定を変更する場合、審判員は、走者をどこまで進めるかを含め、すべての処置をする権限を有する」と明記されています。
リクエスト制度のある今は、こういったケースでの判定変更もあるのだということを念頭に置き、微妙な打球の場合には選手も全力疾走・全力守備を心がけるべきですね。審判団にも最適の判断ができるよう、走者や野手の全ての動きがバックネット上段からのカメラで同一画像内に俯瞰できれば大いに助かるでしょう。この点については
本欄(第35回)で既に述べているのですが、来季からの新たなる視点を持ったカメラの増設に期待したいです。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。