
10月13日のブリュワーズ対ドジャース戦4回一死満塁から、ドジャースのマックス・マンシーの放った打球はセンターフェンスを越えようかというものだったが、中堅のサル・フレリックがジャンピングキャッチ。キャッチはできなかったが打球をかき出すと、フェンスに当たったボールをそのままキャッチ。三塁走者のテオスカー・ヘルナンデスはタッグアップと判断し三塁に戻ったためスタートが遅れ、本塁で走塁死。二塁走者も進塁しておらず、三塁封殺で中ゴロ併殺打となった[写真=Getty Images]
【問】10月13日のMLBナ・リーグ優勝決定シリーズのブリュワーズ対ドジャース第1戦(アメリカンファミリー・フィールド)の4回、センターオーバーの併殺打という珍プレーがありました。状況は一死満塁で、打球はセンターのグラブをはじきフェンスに直撃。その跳ね返りを捕球したセンターからの送球が三塁走者よりも早く本塁に到達したのです。そしてなぜか進塁義務のある二塁走者は二塁にとどまっていたため、捕手は自ら三塁に駆け込み二塁走者も封殺し併殺となりました。一瞬、何が起こったのか全くわかりませんでした。 【答】このプレーは私もリアルタイムで視ていました。で、恥ずかしながらリプレイ映像を確認するまでは混乱してしまいました。センターは直接捕球だったのか否か、本塁はタッグプレーなのかフォースプレーなのか……?
1993年にフロリダにあるジム・エバンス審判学校へ留学させてもらいました。このとき、印象に残った言葉が2つ。ひとつは開講1時間目に言われた「Be Respected!(尊敬される人間になれ)」。まだリプレイ検証の無い時代ですから、判定が支持されるための最後の切り札は豊かな人間性だという教えでした。そしてもうひとつが「Don't Surprise!(驚くな)」。慌ててパニック状態のまま判定をせず、すぐに状況確認をして冷静になれ、ということです。
このプレーも順序だてて考えればすぐに分かること。まずグラブからはじかれた打球がフェンスに当たった時点で地面に着いたのと同じですから、たとえその後にインフライトの状態で捕球しようともアウトではありません。よって各走者には進塁の義務があります。三塁走者はこの時点で三本間のハーフウェイ体勢にあり、一連のセンターのプレーを見てタッグアップかと三塁に戻ってしまいました。そのために本塁へ向かうのが遅れてしまったのです。二塁走者もパニックだったのでしょう。自分の置かれた状況を把握していませんでした。まさに100年に一度も起こりえないようなプレーですから、それも無理はありません。
それにしても感心するのはこれを沈着冷静に
ジャッジできる審判団でした。さすがに球審は120メートル以上も先で起こった捕球か否かという微妙なプレーは判断できなかったはず。でも、この試合は6人制審判で行われており、この打球判定をしたレフト外野審判の両腕が大きく開かれた「ノーキャッチ」のシグナルを見ていました。ですから、すぐに本塁はフォースプレーだと準備ができたのです。このわずか数秒間の脳内処理、まさに「あっぱれ!」ですね。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。