
10月27日、ドジャー・スタジアムで行われたワールド・シリーズ第3戦の2回表、ブルージェイズの一塁走者のボー・ビシェットはカウント1-3からの投球を四球かと思い二塁へ進もうとしたが、これがストライクで捕手からの牽制でドジャースのフレディ・フリーマンにタッグアウトされた[写真=Getty Images]
【問】史上まれに見る面白いMLBのワールド・シリーズでしたが、不満も少々。球審のストライクコールが遅く、一塁走者が牽制死、盗塁死という場面がありました。第3戦では一死一塁、カウント3-1からの高めの投球に対し、ストライクのコールが遅れたため四球と勘違いした走者が捕手からの牽制球でアウト。第7戦でも同様に盗塁を仕掛けた一塁走者が3-2からのコールが遅かったため四球と思い込み、二塁手前でスピードを緩めアウトになったのです。もっと球審はコールを早くすべきではないでしょうか? 【答】球審の大原則は投球ラインを最後まで見続けること。私がパ・リーグ審判になったとき、当時の指導員に口酸っぱく言われました。打者は18.44メートルの投本間のほぼ真ん中で打つか見送るかを決めます。だから時にはワンバウンドするような変化球を振ってしまうし、ヤマが外れればあえなく見逃し三振もしてしまう。ところが球審は打たなくていいのですから、捕手のミットに収まった時点で(規則的には本塁上での通過点ですが)決めればいいのです。こうすれば逸脱するような判定は避けられますし、ゾーンの安定度は格段に上がります。審判初心者がよくやる「スト……ボール!」や「ボ〜ッライク!」はまさに「決め」が早いがために起こるのです。
ただし、ゆっくり過ぎるのは上記のような混乱を招く要因になることも事実です。よって習熟度の上がった審判には逆にコールを早めることも求められます。実際に間髪入れずの
ジャッジは選手にも観衆にも気持ちよく感じられるでしょう。特に早いジャッジを求められるのは三振、四球となるカウント時です。つまりコール次第で塁上の走者の進塁状況が変わるといったケース。そこにハーフスイングがらみの盗塁などとなるとさぁ大変。今度は一、三塁審の最終判定次第で状況も変わります。時には塁審自らが2度のジャッジ(スイングと塁上の判定)をしなければならぬこともあるのです。
で、結論。まず選手は自己判断をせずに審判の最初のジャッジを見極めること。そして判定変更に備え常に走者は全力疾走、野手は全力守備をすること。結果的に安全進塁権が生じれば無駄なプレーとなるかもしれませんが、不利になることはありません。これは得点のからむタイムプレー(第3アウトが先か、本塁到達が先か)でも同様です。このときも当該審判はできるだけタイムラグ(時差)が生じないよう、早めのジャッジを心がけるべきです。
心配なのは来季からMLBでは投球判定にもチャレンジが適用されること。判定変更すれば、上記のようなトラブルが頻出するかも、ですね。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。