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山崎夏生のルール教室

WBCに向けたルールの確認 主催のMLBの内規が最優先/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

11月15日に東京ドームで行われた韓国との侍ジャパン強化試合の5回、野村勇の放った打球はフェアゾーン天井に当たった後に三塁側座席へ。当初はエンタイトルツーベースと判定されたが、東京ドーム特別ルールが正しく適用されファウルとなった。これに関して審判団に確認する井端弘和監督と対応するパウォル球審


【問】11月15、16日に行われた侍ジャパン対韓国の強化試合(東京ドーム)ではトラブル続出でした。15日には投手を強襲した打球判定がワンバウンドだったか否か。その後に東京ドーム天井に当たりエキサイトシートに落ちた打球が二塁打かファウルかで、両プレーについて審判団が協議。翌16日には認められないはずの2度目のリプレイ検証もありました。また初戦の球審が女性だったことにも驚きました。諸々の疑問についての回答をお願いします。

【答】まず、この女性審判こそ当欄第86回で紹介したジェン・パウォル氏でした。今季MLB史上初の公式戦デビューをし、この強化試合では球審と二塁審判を務めました。ただ不慣れな状況下で、不運な局面もありました。

 まず、投手強襲の打球判定です。足元で大きく跳ね上げられた打球は一塁側ファウルゾーンで一塁手が捕球しました。パウォル球審は投手の足に直接当たったインフライト状態と見なしアウトを宣告。これに対し韓国チームはリプレイ検証を要求しますが認められませんでした。KBO(韓国プロ野球)ではフィールド内のすべての打球がその対象となりますが、この大会はWBC本大会(主催はMLB)に向けての強化試合。ということでMLBの内規に従い、塁審の前の打球へのリプレイ検証は認められなかったのです。

 次に東京ドーム天井に当たった打球の処理ですが、その上空のフェアゾーンで当たったならばインプレー。よって捕球されればアウトですし、されなければフェア、エキサイトシート内に落ちてしまえばファウルです。当初の二塁打という判定はありえませんでした。事前のグラウンドルールの確認を怠ったという批判は免れませんが、すぐに原信一朗三塁審判(NPB)が駆け寄りファウルへの判定変更をしたのはナイスアシストでした。ちなみにファウルゾーン上空で当たったならば、その時点で即時にファウルとなります。

 翌日の2度目のリプレイ検証(8回表)は無問題です。事前の取り決め事項でリプレイ検証は1度だけでしたが、8回以降は責任審判の判断あるいは監督からの要請でもう1度可能だったのです。ただ関係者以外には周知されていませんでした。

 このように国際試合では主催者によりルール(内規)が変わりますし、球審は自国の試合を担当しません。ストライクゾーンも試合球も然りで、今大会はMLB基準でした。両国ともに不慣れなピッチクロック(投球時間制限)やピッチコム(サイン伝達機器)にも苦労していたようです。そのせいか両チーム2試合で35四死球の大乱調。まぁ、こんな経験からの対応策を練るのが強化試合の目的と割り切るべきでしょう。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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