
明治神宮大会高校の部・九州国際大付高対山梨学院高のラストプレーは、ファーストプレーか否かが試合の結果を左右した
【問】明治神宮大会高校の部2回戦、9回裏まで山梨学院高が九州国際大付属高を5対4でリードしていました。が、二死満塁1対2からの投球が暴投になってしまい、それを追いかけた捕手が捕球とともに一塁側ベンチ内に入ってしまったのです。同点か、と思いきや審判団は協議の末、三塁走者のみならず二塁走者をも生還させ、九国大付属が6対5での逆転サヨナラ勝ちとなりました。投手の暴投がベンチ内に入った時の進塁は1個ではないでしょうか? 【答】これは勘違いしやすいルールですね。確かに公認野球規則ではそう明記されています(5.06(b)(4)(H))。ただし、他のプレーが介在した場合には投手の暴投ではなく、野手の悪送球と同じ扱いになるのです。このケースでは捕手がベンチ前で暴投に追い付き捕球しましたから、この時点で投手の暴投ではなくなりました。その勢いのままベンチ内に入ってしまったので、野手の悪送球がボールデッドゾーン内に入り込んでしまったのと同じ扱いになります(5.06(b)(4)(G))。今回はこの暴投と悪送球の違いが重要ポイントでした。
ベンチ内にその暴投が入ると判断したならば、そのままにしておけば三塁走者の生還のみの同点で済みました。とはいえ、暴投がフィールド内を転がっていればもちろんインプレーの状態ですから、二塁走者の生還を防ぐために捕手が全力で捕球に行ったのも仕方がないでしょう。アンラッキーな結果となりましたが、責められるプレーではありません。
一部報道ではすでに二塁走者が三塁に達していたために、そこから1個の進塁が認められたと書かれていましたが、これは間違い。三塁に到達していたか否かは無関係で、野手の悪送球や打球がボールデッドゾーンに入った場合の進塁は2個で、その起点となる塁は悪送球の場合は送球当時、打球の場合は投球当時です。ただし内野手のファーストプレーでの悪送球ならば投球当時。故意の場合はいずれもその時点での走者の位置となります。
具体例を挙げるなら外野手からの送球がボールデッドゾーンに入った場合、その送球がなされた瞬間に一塁走者が二塁を通過していれば得点、二塁手前に居れば三塁までの進塁。打球の場合は投球当時ですから、走者が塁を通過したか否かは関係なく2個の進塁。それ以上の進塁を防ごうと故意に打球をスタンドに投げ入れれば、その時点での走者の位置が進塁の起点となります。また牽制球がボールデッドゾーンに入った場合、投手板上からならば投手の送球ですから1個の進塁、外していれば野手の送球ですから2個、となります。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。