
ファームでは基本的に3人制審判で試合を行う。これは審判員の鍛錬という意味も込められている
【問】ファームの試合を観るのが大好きです。若い選手たちへの期待もさることながら、審判たちのキビキビとした動きも際立っていますね。で、いつも思うのですがほとんどが3人制審判です。昨秋のフェニックス・リーグ(宮崎県での教育リーグ)では2人制での試合もありました。一軍では4人制ですし、アマチュアの試合でも然りです。やはりNPBでも審判員不足なのでしょうか? 【答】いや、審判員不足ということではありません。今季のNPBには58人(本契約48人・育成10人)の現役審判員が在籍しています。で、一日の必要人員ですが、一軍は控え審判を含む5人体制で6試合ですから30人。ファームは14チームありますので3人制ならば7試合で21人。仮に4人制としても28人で、最大でも58人ですから人数的には足りているのです。では、なぜファームを3人制、あるいは2人制でやるのかと言えば、ここは選手同様に鍛錬の場だからです。
まずは審判員の人数の変遷から書きます。野球創成期の審判は1人制でした。村長や牧師さんといった地元名士がネット裏に陣取り、何かもめ事が起きたときにだけ判定を下したのです。でも、これでは試合がスムーズに進行しないので、野球通がフィールド内に位置し、投球も打球もアウトもセーフもすべてを裁くことになりました。あの広い球場に1人では大変、ということで投球判定専門の球審と塁での判定を任される塁審の2人制が生まれます。
それでも連続したプレーや複数の走者に対し正確な判定を期すためには塁審がもう1人必要、ということで3人制になり、各塁に位置したらもっといいだろうということで4人制となりました。外野の両サイドにも配置すればポール際やフェンス際の打球、外野手の捕球などの判定精度もさらに上がるだろうと6人制になったのです。理想は6人制ですから、今でもオールスターやクライマックスシリーズ、日本シリーズといった試合ではこの布陣となります。
さて、先述した鍛錬の場ではなぜ審判を少人数とするのかを説明します。審判業の基本は「見る」こと。一番近いところで、最適の角度で見ればそうは見誤りません。ですからデメリットは少人数ゆえに判定位置が遠かったり、角度が悪くなったりすることが頻発します。塁審が内野内に位置すればハーフスイングは見えにくい。球審も時にはライン際の打球を、あるいは90メートル以上も先のポール際の打球判定さえしなければなりません。でもそれだけがすべてではないのです。次回はそれを上回るメリットについて書きます(次回に続く)。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。