
2015年5月4日の広島対巨人[マツダ広島]では、2対2と同点の9回裏、広島の攻撃は一死満塁で、打者・小窪哲也の放った打球は本塁付近への飛球となり、二、三塁塁審はインフィールドフライを宣告。これで打者はアウトとなり二死となったが、これを一塁手のホアン・フランシスコと三塁手の村田修一がお見合いする形で落球。すでに打者はアウトのため三塁走者をアウトにするにはタッグが必要だが、フランシスコにはインフィールドフライが伝わっておらず、フォースプレーと勘違いして本塁を踏んで一塁へ送球。直後に三塁走者が本塁へかえり広島のサヨナラ勝ちとなった
【問】3月12日のDeNA対広島(横浜)のオープン戦で珍しいプレーがありました。7回表、広島の攻撃は一死一、二塁で打球はショートフライ。すぐにインフィールドフライが宣告されたのですが、なんと二塁走者のモンテロ(広島)が飛び出していたのです。フライを捕った石上泰輝(DeNA)は帰塁前にタッグをして併殺となりました。ただ、場内放送の説明では「二塁でのフォースプレーがあり、協議の結果アウトとします」とのこと。よく意味が分からないのですが……? 【答】これは単なる用語の言い間違いです。観衆の前でいきなりマイクを持たされ、正確無比にプレーの説明をすることの困難さをどうかご理解、ご容赦ください。ただ、このプレー自体には難しい要素がたくさん入っていました。
順を追って説明します。まずインフィールドフライが宣告された時点で打者はアウトが確定します。よっていずれの走者にも進塁の義務は生じません。ですから「フォースプレー」はありえないのです。
打球が捕球されたプレーにおいて、塁を飛び出した走者が戻るケースでは、走者の帰塁と送球の捕球タイミングのどちらが早いかという、一見フォースプレーのように見えます。しかし進塁にはタッグアップの義務があるので、それが正規になされていないというアピールプレーなのです。野手は頻繁に起こるプレーなので、あえて塁上でグラブを掲げ塁審にアピールをしないだけで、プロアマ問わず暗黙の了解事項です。ですからこういった走者の飛び出しや早過ぎるリタッチが第3アウトならば得点のからむタイムプレーの対象ともなります。
今回のケースは帰塁前にタッグされていましたからこの時点でアウトが確定、もしもタッグされずとも野手が先に元の塁を踏めばアピールアウトとなります。
問題なのは野手がインフィールドフライを落球した場合です。これも打者はアウトですが、以後はインプレーです。捕球していないのですからタッグアップの必要はなく、各塁でのプレーはすべてタッグプレーとなります。よって一死一、二塁でインフィールドフライを落球、それを見て慌てて二塁走者は三塁へ突入、三塁手は塁上から手を伸ばし送球を捕球したらアウト……でないのはもうお分かりですね。こんな勘違いからの珍プレーで「サヨナラインフィールド事件」と検索すれば、その事例がいくつも出てきます。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。