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山崎夏生のルール教室

MLBでついに導入されたABSのストライクゾーンの決め方/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

3月26日、ダイヤモンドバックス対ドジャース[ドジャー・スタジアム]の1回、スコアボードに表示されたABSレビュー[写真=Getty Images]


【問】いよいよNPBもMLBも開幕しました。まさに球春到来ですが、今季の注目はMLBで正式採用された通称「ロボット審判」と呼ばれるABS(Automated Ball-Strike System)。試合にはどのような影響が出るでしょうか。先月のWBC決勝戦(アメリカ対ベネズエラ)での最後の見逃し三振の判定は大きな話題となりました。もしもABSでの最終結果ならば誰もが納得できたのではないか、という気がします。

【答】そうですね。当欄でABSを取り上げるのはこれで3回目(第6174回)。ついにMLBでの正式採用となりました。と同時にそのシステムの全容も公開されました。

 まずコース幅は全世界共通の432ミリですが、高低は打者により違います。よって打撃姿勢云々に関係なく、上限を身長の53.5%、下限を27%と定めました。もちろんシーズン前にMLB全選手の計測を実施しています。ここで問題なのはその高低とコースをどこで定めるのか、ということ。本来のストライクゾーンとは五角柱の立体ですが、これでは落差の大きな変化球や打席内での立ち位置に対応させるのが大変です。まずは正確性よりも一貫性。よっていささか乱暴ですが、本塁ベース中央の四角い平面を通過するか否か、という基準にしました。

 従来は球審も打者もスイングを想定した五角柱でゾーンを確定していたのです。ですから打席位置や打撃姿勢は非常に重要な判定要素でしたが、これはもはや無関係。ABSゾーンこそが絶対、というわけです。これに慣れるのも今季の大きな課題でしょう。

 オープン戦では1907回のチャレンジがあり1012回の判定変更で、その率は53.1%。開幕カードの最初の12試合では31回で19回変更の61.3%。全30チームが162試合を行い、さらにポストシーズンマッチからワールドシリーズまで含めれば2500試合以上となりますから、少なく見積もっても5000〜1万球近くの判定変更があるでしょう。この膨大な数字にはめまいすら覚えますが、これも近代野球。奇しくも開幕戦では山本由伸投手(ドジャース)がその洗礼を浴びました。見逃し三振と思いきやボールに変更。幸いその後は左飛に打ち取りましたが、「正しい判定だから歓迎する」と割り切っていました。

 もはや球審のコールは最終決定ではないゆえ、選手は常に判定変更も意識したプレーを心掛けること、それは塁審も同様です。特にフルカウントからの1球などでは局面が大きく変わります。そしてABSがNPBに導入されるのも時間の問題。近未来のキャンプでは審判団が本塁中央にある平面のABSゾーンの習得に励む日が……いや、KBO(韓国プロ野球)のように全球ABS判定となれば、ブルペン練習の必要さえなくなります。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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