
5月10日のソフトバンク対ロッテ戦は3回裏、二死三塁の場面で三塁走者のソフトバンク・周東佑京がロッテの毛利海大が初球を投じる直前にホームスチール。毛利もすぐに本塁へ送球し、捕手の松川虎生が周東にタッチしたがボールがミットからこぼれてセーフとなった
【問】5月10日のソフトバンク対ロッテ戦(みずほPayPay)では周東佑京選手(ソフトバンク)のホームスチールというプレミアもののスーパープレーを見せてもらいました。ただ、このときはよく分からなかったのですが、松川虎生捕手(ロッテ)が本塁の前に立ちはだかったので打撃妨害ではないか? それ以前に毛利海大投手(ロッテ)のボークではないか? という声も多くあるようです。詳しい解説をお願いします。 【答】これは10年に一度あるかないかという、ルールマニア好みの難プレーでしたね。打者と球審の間をわれわれは「魔の2メートル」とよく言います。今回もアウト・セーフのみならず投球か送球か、打撃妨害か守備妨害か、はたまたボークか? という難題が山積みでした。順に追って説明します。
まず公式記録は投手が投手板を外して投じた送球となっています。このプレーは初球でしたからカウントは0-0のままで、本塁での判定のみの問題です。球審は、一度はアウトと
コールしたものの、捕手の落球を見てセーフと切り替えたのは好判断でした。
このケースでは本塁へは投手(野手)の送球ですから、もしも打者が打つ、あるいは捕手の守備を妨害すれば無死か一死ならばプレーの対象となる三塁走者がアウト、二死ならば打者が守備妨害でアウトとなります。もちろん無得点で次回の先頭は次打者からです(5.09.b.8)。
これが投手板を外さずに投げた投球でしたら、大きく状況は変わります。捕球前に本塁の前方に飛び出した時点で捕手の打撃妨害となります。三塁走者の得点は認められ、なおかつ打者は打撃行為がなくとも一塁への進塁となります。もしも投手が一時静止をせずに投げたボークの投球の場合でも然りです。今回のケースでしたら得点が認められ、二死一塁での試合再開となります(6.01.g)。
映像を見ると投手が投手板を外していたか否かが微妙ですが、ボークや打撃妨害、守備妨害などはすべてリプレイ検証の対象外ですから、結果はどうあれ両監督共にリクエストを求めることはできませんでした。あえて言うならば審判団独自の判断での協議に委ねるのみです。捕手の落球があったので誰が見ても納得のセーフとなりましたが、もしも確捕したままのアウトでしたら大きなトラブルになっていたかもしれません。そういった意味では審判団にとってはラッキーなラッキュー(落球)でしたね。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。