
5月15日の巨人対DeNA戦[東京ドーム]の7回裏二死走者なし、巨人・浦田俊輔がフォロースルーの際にバットがすっぽ抜け「危険スイング」の警告を受けた
【問】開幕早々立て続けにバットが折れたり、手から離れたバットが捕手や球審を直撃するという事故が起きています。そして5月11日の理事会ではついに「危険スイング」には処分を科すと発表されました。折れたバットはやむなしですが、手から離れた場合には1度目は警告、2度目は退場。もしも選手や審判を直撃したり、ダグアウトやスタンドに飛び込んだならば即時に退場になるとのこと。その経緯の解説をお願いします。 【答】150キロ以上の投球や打球、送球が飛び交い、それを打ち守るスポーツですから、ある程度のリスクはやむなし。それでも何よりも大切なのは安全性で、ルールの改正や用具の変遷はその歴史を物語っています。
まず野球創世期には打者も走者もヘルメットなどかぶりませんでしたが、日米ともに投球や送球が頭部に当たり死亡するという不幸な事故がありました。そこで1970年代からは野手以外は(後には捕手も)着用が義務づけられました。さらに今は耳当て付きとなっています。
そして自分の身は自分で守る、という意識が徹底され死球に備えてのアームガード、自打球に備えてのレガースも任意ですが着用する選手も増えました。捕手や球審のマスクやプロテクター、レガースなども然りで、20世紀のころの防具などは強度が低く、今ではとても怖くて使えない代物です。
近年、特に目立つのがバットによる事故です。折れやすくなったのはしなり(アオダモ)よりも反発(メープル・ホワイトアッシュなど)を重視する素材が選ばれること。そしてスイングスピードを上げ、手元での変化球に対応するためにバットの軽量化が進んでいることでしょう。今はほとんどの選手が800グラム台で、さらにインパクト後は片手で振り抜く打法も流行ってきているのです。フォロースルーを大きくすれば必然的にバットがすっぽ抜けたり、捕手の頭部に近付きます。
こういった用具や打撃技術は現行ルールでは規制できません。とはいえ、本塁での走者の激突、捕手のブロックを禁止するコリジョンルール(6.01.i)や、塁上での併殺阻止のための危険スライディングの禁止(6.01.j)などは野球の安全性を担保するために作られました。現時点でのこの「危険スイング」はあくまでもNPBでの内規であり、危険球の即時退場と同様です。公認野球規則の改正ではありません。野球界全体に対する注意喚起と今は捉えるべきでしょう。5月14日には
日本ハム対
楽天(鎌ケ谷)の二軍戦で、翌15日には巨人対DeNA(東京ドーム)の一軍戦で適用例が出ましたが、幸い「警告」のみで済みました。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。