
今季よりNPBではリプレーセンターを設置し、リプレー検証に当たっている。ただし、原則としては判定を覆すに値する明確な映像が無ければ元の判定通り。検証結果に対する抗議は即退場となる
【問】2018年にNPBでリクエスト制度が本格採用されて以来、つまらぬトラブルや退場件数がめっきり減ったと思います。ところが近年はまた増加傾向にあるようで、6月には森下翔太選手(阪神)が投球判定に対しての侮辱行為で、藤川球児監督(阪神)はリクエスト後の最終判定に異議を唱え、相川亮二監督(DeNA)は打撃妨害を巡る5分以上の抗議による遅延行為で、それぞれ退場処分となっています。それに伴いネット上での審判批判も炎上していますが、どうお考えですか? 【答】今季からNPBではリプレーセンターを新設し、リクエスト後の最終判定は現場ではなくセンター内の現役審判2名と映像専門の操作職員1名に委ねることになりました。その結果、判定精度は向上したとは思いますが、それ以上にチームやファンの求める正誤基準が高くなっているような気がします。大原則として判定を覆すに値する明確な映像が無ければ元の判定通り。そして検証結果に対する抗議は即退場。検証対象以外のプレー(投球判定・ボーク・守備妨害など)については従来通り。この規定は今も変わっていません。
こういった不満を野球ファンならばネット上の掲示板などでぶつけたくなる心情も理解はします。NPB審判は「仕事」ですから、その対価に見合わぬような
ジャッジを見せればある程度の苦言も覚悟の上ですし、その代償として二軍降格や契約解除のリスクも負っています。だからこそ日々のトレーニングを欠かさず、キャンプでは万の単位の練習をこなし、公式戦突入後も緊張の日々を過ごしているのです。
やはり度を越えたものはいけません。7月1日よりNPBではSNS上における審判員に対する誹謗中傷や脅迫、名誉棄損といった違法、不当な投稿への対応を強化するため「SNS誹謗中傷監視システム」を導入しました。まだその具体例は公表されていませんが、要はこのシステムを活用し継続的なモニタリングを行う。その結果、悪質な投稿に対しては運営会社への通報やアカウントのブロック、投稿削除、時には警察への届け出や法的措置もとる、という厳格な姿勢を見せました。どうかご用心を。
私が特に強く願うのはアマチュア審判に対するものです。彼らはあくまでも本業ありきでのボランティア活動です。週末や盆休みなどを返上し、時には有給休暇さえとって、それこそ交通費とお弁当程度の支給で、あの場に立っています。「仕事」であるプロと同等の技量を求めてはなりませんし、むしろ野球人ならば彼らには感謝しかないはず。監視システムの対象外なれど、最も慎むべき行為です。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。