
7月18日のオリックス対日本ハム[京セラドーム]の4回表、無死二塁から万波中正の飛球をめぐり岸田護監督[右]がリクエストし、判定はアウトに変更。しかし走者の判定に対し納得がいかず、波留敏夫コーチとともに審判団に確認するが、ベンチに戻るように諭された
【問】7月18日のオリックス対日本ハム戦(京セラドーム)で、またも不可解な判定がありました。4回表の日本ハムの攻撃、無死二塁から万波中正選手(日本ハム)が放ったライトフェンス際への打球を、一塁審判はフェンス直撃後の捕球としてフェアの判定。岸田護監督(オリックス)のリクエストにより捕球によるアウトと判定変更となったのですが、なんとタッグアップしていなかった二塁走者のレイエス選手の三塁への進塁が認められ、一死三塁での試合再開となったのです。右翼・来田涼斗選手は捕球後に二塁へ送球していましたから、併殺が正解ではないでしょうか? 【答】これもまたリクエスト制度のある今ならではのトラブルですね。かつては審判の判定は不変という大原則のもとにプレーが進行しました。今は判定変更もありうる、という想定の下での次善策が求められています。
まず二塁走者は二、三塁間のハーフウェーの状態で一塁審判のフェアの
ジャッジを見てから三塁への進塁を試みています。ですからタッグアップをしないのは当然。ひょっとしてこの時点で正しく「アウト」の判定が下されていれば大急ぎで二塁へ帰塁し、そこからタッグアップそして三塁への進塁を試みたでしょう。フェンス際の大飛球ですから三塁への進塁可能性は高かったと審判団は判断し、一死三塁での試合再開としました。
ここで問題は2つ。まずこの進塁に疑念を抱いた岸田監督は2度目のリクエストを求めることができました。走者の離塁が早いか否かはその対象のプレーだからです。明らかに二塁走者はタッグアップせずに三塁へ進塁しましたからルール上ではアピールアウトとなります。とはいえ、その前段階での「フェア」の判定あればこその進塁でしたから、その不利益は取り除かねばなりません。よって、この時点で「アウト」の可能性はなくなりました。岸田監督にとってはこの点で納得がいかなかったのかもしれませんが、やむなしです。
次に責任審判が判定変更後の場内放送で「タッグアップによる進塁」と言ってしまったことです。これは前述したように打球の位置と走者の走力を鑑みての、「審判団の判断による進塁」でした。この説明不足からの混乱については試合後の会見できちんと謝罪していますから、どうかご容赦ください。大観衆の見守る中でいきなりマイクを手渡され、瞬時に下書きもないままに過不足なく正確かつ丁寧に説明することは至難の業なのです。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。