
9月19日の阪神対広島[甲子園]の4回表、広島・中村奨成の飛球を、左翼の阪神・立石正広が倒れ込みながらキャッチするもボールはこぼれ落ち、完全捕球したと認められなかった
【問】9月19日の阪神対広島(甲子園)の4回表、先頭打者の中村奨成選手(広島)の放った飛球を、左翼を守っていた立石正広選手(阪神)が倒れ込みながらグラブにおさめましたが、その勢いで無情にもボールがこぼれ落ちてしまいました。でも、一度はグラブに入っていたので、その後の落球ではないでしょうか? 立石選手も捕球だとアピールしていましたが、リクエストすら受け入れてもらえませんでした。完全捕球と落球の違いはどう見分けるのですか? 【答】公認野球規則の定義15「CATCH」(捕球)には「野手が、インフライトの打球、投球または送球を、手またはグラブでしっかりと受け止め、かつそれを確実につかむ行為」とあり「ボールに触れると同時、あるいはその直後に、ほかのプレーヤーや壁と衝突したり、倒れた結果、落球した場合は捕球ではない」と記されています。要はプレーヤーの体勢が転倒したりして動いている状態ではまだ「完全捕球」とは判断されないのです。グラブに打球がおさまった後の静止状態があるかどうか、ということですね。また「手またはグラブ」とありますから、胸に抱きかかえていたり脇に挟み込んだような状態でも捕球ではありません。件のプレーでは一旦はグラブにおさまっていましたが、やはり着地した勢いでボールがこぼれ落ちていましたからノーキャッチは妥当な判断だったでしょう。
そして、これもボールが接地したか否かという「事実の確認」ではなく、それが完全捕球か否かという塁審の「判断」ですから、リクエストの対象外なのです。
似たようなケースでよくあるのが併殺時の二塁でのピボットマン(ボールを継送する野手)の落球です。これを見分けるのは野手の背後からでは背中越しとなり困難。よって二塁審判は走者が居るときには内野内に位置取りするようになりました。「オープングラブポリシー」とはグラブの中を見に行く、ということで、この位置からですとグラブと送球時の手の動きが明確に見えます。
一つの基準として落球ならばボールは野手の真下に落ちる、完全捕球後の送球動作に移っていたならば後方に落ちる、と判断しています。ここで難しいのがグラブトスのようにして瞬時にグラブから送球する手にボールを移動させてしまうプレー。近年MLBのトッププレーヤーではよく見られますが、これも超一流のテクニックとして認め、たとえ「しっかりと受け止め」ていなくとも、送球する手からでしたら捕球後の落球としています。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。