まさに息を吹き返した1勝だったといえる。先週、独走を続けていた
広島の勢いにかげりが見えてきていた。8月5日からマツダ広島で行われた2位・
巨人との首位攻防戦で連敗を喫して、ゲーム差が4.5まで縮まってしまった。しかし、3戦目(7日)、1点ビハインドの9回二死から
菊池涼介の一発で追いつき、最後は二死一塁から
新井貴浩がサヨナラ打。まさに“神ってる”勝利で連敗も4で止めた。
それまでは“神って”なかった。2戦目(6日)の6回裏には2対3と1点ビハインドで一死満塁のチャンスだったが、
會澤翼が遊ゴロ併殺打。
戸根千明の内角スライダーに詰まらされ、注文どおりの結果となってしまった。初回も2点を先制した後、さらに二死一、三塁とチャンスは続いたが一走の鈴木が盗塁を試みて二塁憤死。あと一押しすることができなかった。打線の復調が底の状態から脱する条件となっていたが、劇的な勝利で勢いがつくのは間違いない。

新井[右]のサヨナラ打で連敗を止めた広島。再び勢いに乗ることができるか/写真=前島進
ただ、これまでも実際のところ、現場の首脳陣や選手はまだそんなに優勝を意識していなかっただろう。25年ぶりに頂点に立つチャンスなのだが、そんなことよりも目の前の試合に一生懸命に戦ってきた結果。それが快進撃の源であったはずだ。広島はそれを忘れてはいけない。
一方、巨人は抑えの
澤村拓一で勝利を落としたのは痛い。それまで7連勝していたが、仕掛けるのが少し早過ぎたようにも思っていた。というか、あまりにも差が付き過ぎていたので、仕掛けざるを得なかったのかもしれないが、このまま勝ち続けることはなかなかないだろう、と。最悪な形で勢いが止まってしまったが、その影響をいかに最小限に抑えるかがカギになる。
そもそも巨人が逆襲を開始したのは7月24日の
DeNA戦[横浜]で四番に
阿部慎之助を据えてからだ。この試合、一番・
長野久義、三番・
坂本勇人、五番・
村田修一という並びにしたが、これがハマったからだ。その試合から8月6日まで10勝1敗。今年の巨人は四番に試行錯誤してきたが、やはり阿部が中心に座っていると打線に安定感が生まれるのは間違いない。そして、六番に入っている
ギャレットがプレッシャーの少ない打順に組み込まれていることで、実にリ
ラックスして打席に入っており、貴重な一打を放つこともしばしばだ。チームに好循環を呼ぶ男。やはり、巨人は阿部のチームであると再認識させられるところだ。とにかく巨人は阿部を中心に戦って、再び広島に食らいつきたい。
いずれにせよ、本当の勝負は9月に入ってからになるだろう。広島も
岡田明丈が抹消されて先発陣が手薄になってきた。最終盤となって広島と巨人の差が5ゲーム内で争っていれば、最後の最後まで優勝争いはもつれることになる可能性はないとは言えない。リオ五輪、高校野球が盛り上がっているが、暑い夏とともに、灼熱のペナントレースはもうしばらく続きそうだ。
PROFILE いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に
西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年
阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年
オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。