
日本シリーズ初戦で先制2ランを放つなど3安打4打点の栗原。巨人はこの若タカの勢いを止めなければいけない[写真=榎本郁也]
日本シリーズ前、私は巨人が昨年、4連敗で日本一を逃した借りを返し、
ソフトバンクを下すにはエースの
菅野智之が勝利を得ることが“絶対条件”だと考えていた。ソフトバンクはケガで今年9勝を挙げた
東浜巨を欠いているとはいえ、
千賀滉大を筆頭に先発陣の質、量ともに巨人よりは厚い。菅野以降のことを考えれば、巨人は初戦を落としてしまうと巻き返しはかなり苦しいだろうということだ。
そして迎えた日本シリーズ初戦(京セラドーム)、ご承知のとおり、巨人は菅野で試合を落としてしまった。菅野の出来は悪くはなかった。初回からストレートは150キロ以上を計時し、先頭の
周東佑京を遊直、
中村晃はフルカウントから三邪飛に仕留める。
柳田悠岐は1ボール2ストライクから内角低めへのスライダーで空振り三振に斬って取った。
だが、2回だ。先頭の
グラシアルに右前打を浴び、打席には
栗原陵矢。6年目の今季、レギュラーをつかんで打率.243、17本塁打、73打点をマーク。打率は低いが打点はリーグ4位と勝負強さを兼ね備えている。スライダーが2球外れ、2ボールとなった3球目、ふたたび巨人バッテリーが選択したのはスライダー。しかし、それが真ん中内寄りへ甘く入った。私には簡単にストライクを取りにいったように見えたが、栗原はファーストストライクから積極的にスイングする打者だ。本人も「ファーストストライクから思い切って打ちにいこうと思っていました」と語っていたが、見事に菅野のスライダーを打ち抜き右翼席へ運ぶ先制2ランとした。
今季、栗原が放った17本塁打の内訳を見ると真ん中が8本、真ん中内寄りが5本と一番、本塁打にされるコースでもあった。
ロッテとのCS2試合で栗原は無安打に終わり、巨人バッテリーに警戒感が薄れていたのか、安易な配球となってしまった。栗原は4回の第2打席でも真ん中内寄りのストレートを右翼へ二塁打、6回の第3打席では二死一、三塁で真ん中外角のフォークを左中間への適時2点二塁打。8回の第4打席は四球を選び、3打数3安打1四球4打点と“シリーズ男”候補に躍り出た。この栗原をこれ以上に調子づかせず、巨人バッテリーがどう抑えていくかがシリーズの行方を左右するのは言うまでもない。
巨人打線は千賀の低めのフォークを見極め、突破口を開こうとしていた。3回には
大城卓三が粘って12球を投げさせ、4回には
坂本勇人が四球を選び、続く
岡本和真もフルカウントから最後、フォークにバットを止めて四球を選んだ。無死一、二塁と同点に追いつくチャンスをつくったが、
丸佳浩が2ボールナッシングから外角低めのボール球のストレートに手を出し、最悪の遊ゴロ併殺打。3者凡退に終わったのは2回と7回だけだったが、要所で不用意な打撃となり、チャンスを生かすことができなかった。
第2戦も巨人は2対13と大敗。初回から先発の
今村信貴が3失点を喫するなど成す術がなく、栗原にも4安打されるなど勢いを止められない。とにかく巨人は打線が先制点を奪い、投手陣がそれを守り抜いていくしかない。何とか、もう1度、菅野の登板までつなげて、逆転で日本一を狙っていくしかない。
PROFILE 伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。
広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に
西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年
阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年
オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。