
四番・村上に三冠王を獲得した昨季ほどの爆発力がなかった[写真=川口洋邦]
本当の強さはまだなかったのだろうか。
オリックスが3連覇へ突き進む一方、連覇を果たしていた
ヤクルトは今季5位に低迷している(9月11日現在、以下同)。2日の
阪神戦(神宮)に敗れ、
広島が勝利したことで優勝の可能性が完全消滅。3日以降も2勝5敗と勝利を重ねることができない。50勝74敗3分けで勝率.403、借金は24を数え、最下位であってもおかしくない成績だ。
チーム総得点は472、同失点は508。得失点差はマイナス36と投打のバランスが悪い。最下位に沈む
中日の得失点差マイナス101は論外として、1位・阪神は124、2位・広島はマイナス7、3位・
DeNAは25、4位・
巨人は10とすべてヤクルトを上回る。これではヤクルトの上位進出など望めるべくもない。
やはり、ヤクルトにとって痛かったのは得点能力が落ちたことだろう。昨年は1試合平均得点が4.33だったのが、今年は3.72。連覇を果たしたとはいえ、もともと投手力は高くない。2年連続で10勝を挙げた投手はおらず、2ケタ勝利ゼロで連覇を達成したのは史上初の出来事だった。頂点に立てたのは打線の力が大きく、今年は投手陣もリーグ最下位のチーム防御率3.70とさらに弱体化していただけに、苦境に陥ってしまうのは必然だった。
打線が機能していない大きな要因の一つは
塩見泰隆をケガで欠くことが多かったからだろう。昨年は主に一番を打ち、打率.276、16本塁打、54打点、24盗塁をマーク。それが今季は打率.296を残しているが、35試合出場にとどまっている。
ヤクルトは今季、一番に10選手を起用しているが、チームの先発一番の成績は打率.234、7本塁打、30打点、21盗塁、出塁率.279。昨季は打率.266、14本塁打、48打点、24盗塁、出塁率.341だから、今季は特に打率、出塁率で大きく数字を落としてしまっている。打線の斬り込み役の出塁能力が落ちてしまえば、得点を重ねる機会も減ってしまう。
さらに、走者をかえす役割の選手の不振だ。昨季、三冠王に輝いた四番・
村上宗隆がシーズン序盤から苦しんだ。4月は月間打率.152。昨季は打率.318、56本塁打、134打点を挙げたバッティングから考えると、信じられない姿だった。徐々に本塁打も飛び出すようになり、現在は打率.251、26本塁打、75打点。ただ、152三振は多過ぎる。
オリックスは今季、
吉田正尚がメジャー移籍。代わりに
森友哉を補強するなど戦力を落とさなかった。さらに21年の本塁打王・
杉本裕太郎の好調が持続しない状況だったが、5年目の
頓宮裕真が覚醒。首位打者をうかがう打撃を見せている。
紅林弘太郎、
宜保翔など若手も台頭。投手陣も
山下舜平大、
東晃平ら生きのいい投手が次々と出てくる。率直に言って、ヤクルトはこのあたりがオリックスに劣っていたということだろう。
昨年までの10年間でヤクルトは1位3回、2位1回、5位1回、6位5回。3回優勝しているが最も多いのが最下位だ。強さが安定しないチームとも言えるだろうが、そこを打破するように球団一丸となって考えなければいけない。
PROFILE 伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に
西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。