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伊原春樹コラム

伊原春樹コラム「広島との首位攻防戦で3連勝をマーク。『決断』と『我慢』が抜群。阿部監督の采配が巨人をVへ」

 

2位・広島に3連勝を果たした首位・巨人。阿部監督の采配がさえた[写真=井沢雄一郎]


 巨人が9月10日からの2位・広島との首位攻防3連戦(マツダ広島)で3連勝を飾った。このスイープもあり、15日現在で2位・阪神に2ゲーム差の首位。優勝に向けて勢いは増すばかりである。

 首位攻防3連戦では阿部慎之助監督の采配が光った。特に11日の第2戦だ。この試合、巨人打線は広島先発・アドゥワ誠、リリーフ左腕・ハーンに抑え込まれ、8回終了時点で0対2。9回、広島のマウンドには栗林良吏が上がった。この登板前まで37セーブ、防御率0.88をマークしている鉄壁守護神。巨人は敗色濃厚だった。

 しかし、先頭の代打・中山礼都がストレートの四球で出塁すると、続く丸佳浩もボールを見極めて四球を選ぶ。無死一、二塁で打席には坂本勇人を迎えた。2点ビハインドのこの場面、ほかの指揮官なら100%犠打を選択しただろう。一死二、三塁として確実に同点の可能性を高めていく。私が指揮を執っていたとしても、その作戦をとった。

 だが、巨人ベンチは強攻策。坂本はカウント0-1からの2球目、外角高めに浮いたフォークをたたいて左前に運び、無死満塁とチャンスを広げた。ここから巨人打線は栗林に襲い掛かり、3対2と逆転。代わった森浦大輔大道温貴からも安打を重ねる。この回、一挙9得点を奪い取り、9対2と逆転勝利を飾った。

 阿部監督は坂本が打席に入る前に「どんな結果でもいいから好きに打ってこい」と声を掛けたという。これで坂本の迷いは吹っ切れたと思う。ここで何も言われなければ坂本もいろいろと頭の中で考えて打席に立ったはずだ。犠打のサインが出ていなければ、ランナーを進めるために右打ちをしたほうがいいのかなどと考えが渦巻く。そうすると、得てしてうまくいかないことが多いが、阿部監督から「好きに打て」と言われたことで、積極的にバットを振ることができたのは間違いない。

 1戦目では先発・菅野智之を5回1安打無失点でマウンドから降ろした。わずか57球。先を見据えての決断だが、なかなか普通の監督ではできないことだ。これを恐れずに決断できることが阿部監督の強みだと思う。監督1年目だが選手起用や作戦などで、思い切った采配が見受けられる。かと思うと膠着(こうちゃく)した状況ではジーッと我慢していることもある。

 これは現役時代に長年、正捕手を務めていたからこそでもあるだろう。巨人の扇の要として数々の修羅場をくぐってきた阿部監督。だから、どのような状況でもドシッとしている。監督としても決断ができ、我慢もできる。この両方を持ち合わせている阿部監督の指揮官としての能力が、シーズン最終盤でさらに開花してきたように思う。巨人は4年ぶりの優勝へ、間もなくカウントダウンに入るだろう。

PROFILE
伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。
伊原春樹の野球の真髄

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座右の銘は野球道。野球評論家として存在感を放つ伊原春樹の連載コラム。

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