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本誌編集長コラム

一服の清涼剤

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5月27日の日本ハム戦(東京ドーム)で星野真澄(巨人)が育成出身では4人目となるプロ初勝利をマークした。2番手として4回表から登板し、3イニングをパーフェクトピッチング。若干、腕を下げた新フォームが安定感を導いて、四球を恐れる姿はどこにもなかった。堂々たるマウンドさばきは十分に一軍戦力たりえるものだった。

2年前、新人だった星野をインタビューしたことがある。独立リーグのBCリーグ・信濃を経て、2010年育成ドラフト1位で入団した左腕。プロ生活は最下層からのスタートとなったが、1年目のキャンプから首脳陣の評価が高かった。粗削りながら打者に立ち向かう姿勢で結果を残し、開幕前には支配下登録を勝ち取った。

一軍でも登板を重ねていた初夏、星野の心境が気になり、話を聞きに寮を訪れたのだが、その記事に付けたタイトルは「『劣等感』サウスポー」。常に劣等感を抱いているという言葉が印象的だったからだ。

「プロでは僕より劣っている選手はいませんから。そんな状況でも、自分とは何が違うのかということを考えないといけません。人より劣っている部分に気が付けることは、ある種の才能でしょう。いい意味での劣等感は必要だと思いますね」

ただ、1年目は34試合に登板したが、昨年はわずか3試合のみに終わった。しかし、きっと『劣等感』を失うことなく前を見据えていたからこそ、今季の再浮上の兆しにつながったのだろう。

「長かった。うれしいの一言です。野球っていいものですね」と実感を込めて、さわやかに喜びを表した星野。たびたび『場外』が騒がしくなっている巨人だけに、苦労人の躍進は一服の清涼剤となる。(編集長・小林)

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野球の風

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週刊ベースボール編集長の編集後記。球界の動きや選手に対して編集長が思いをつづる。

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