若くして大金を得ると人生おかしくもなる

1969年オフ、兼任監督に就任した筆者。34歳という若さで指揮官となったが当初自信はまったくなかったという/写真=BBM
34歳で南海の捕手兼任監督に就任した私。野球以外は何も知らない、分からない無知無学な人間だった。それがいつの間にか、移動の合間を縫って歴史物など書物をたしなんでいるようなイメージがついているようだ。どうして皆さまがそんなふうにいいほうへ勘違いしてくれたのか、私自身分からない。
おかげで引退して10年あまり経ち、いわゆる“講演ブーム”が来たときには、ずいぶん忙しくさせてもらった。1日2回は当たり前。成人の日など、1日4講演行ったこともあった。あのころは私だけでなく、猫も杓子も講演の依頼を受けいた。そんな時代が10年ほど続いたから、私も家を建てることができたわけだ。そういった講演では、前回述べたような、「努力は裏切らない」という話をよくしていた。
野球は――野球そのものが人生を表しているようなところがある。野球と人生はよく似ているから、多くの人が野球に興味を持つのだろう。
講演会のお客さんはしっかり話を聞いてくれるからよかった。選手たちに「プロ野球選手である前に社会人であることをきちんと自覚しろ」とミーティングで話しても、ほとんど聞いちゃいなかった。プロ野球選手は若くして契約金だ、年俸だとサラリーマンの数倍も給料をもらう。そりゃあ、おかしくもなるはずだ。お金は人を変える。そこは一般社会でも同様だろうが、若くして大金を持つと、人生がおかしくなる。急に自分が偉くなったような錯覚を起こし、人を見下しさえもする。
私は謙虚こそ美徳だと思っている・・・
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