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2021タイトルホルダーインタビュー

ロッテ・益田直也 インタビュー 最高の結末へ「信念を持って投げている場所だから」

 

不撓(ふとう)不屈の精神の象徴だ。昨季の登板67試合はすべて最終回。9回、打ち切りのルールもあって、タイトルを獲得した38セーブに加え、67完了、18引き分けは日本記録だ。勝敗を託される9回のマウンドを守り続ける男の矜恃──。皆が望む結末を迎えるため腕を振る。
取材・構成=鶴田成秀 写真=小山真司、BBM

益田にとっての“セーブ”の意味こそが、気迫みなぎる投球の源


敗戦から得たもの


 強い心が前を向かせる。チームの勝敗も背負う9回だけに、失点の悔しさは大きなもの。ネガティブになりがちな思考を払拭(ふっしょく)するのは己の信念だ。振り返れば開幕連敗発進が、右腕をより強くした。

──13年以来のタイトル獲得となりました。奪還の意識はあったのでしょうか。

益田 いや、獲りたいと思ってやっていたわけではなかったので。シーズン中も意識はなくて。といっても20セーブ超えたくらいから「獲れるんじゃないかな」と思うようになったんですけど。(2位の)松井君(松井裕樹楽天)がケガをして余裕になったので、セーブの数を気にすることなくやっていました。

──8年前と比べて「考えながら投げた」とも言っていましたが。

益田 はい。あのとき(13年)は、ただガムシャラに投げていただけだったんです。でも、昨年は自分でシチュエーションとか点差とか、バッターとかを考えて、見て、感じて投げていたので。なので、8年前よりも自分としては、価値のあるタイトルなのかなと思います。

──シチュエーションは多岐にわたります。一番、頭に入れているのは。

益田 う〜ん、一番最悪のシチュエーションまでを想定しているんですけど……。一番良いのは、3人で抑えて終わること。大きくシチュエーションを分けてつくって、あとは対バッター。どう攻めていくか、ですよね。そこは臨機応変にバッターの反応を見て。ホントいろいろありますが、一番は「勝っている場面か引き分け(同点)の場面で行っている」ということ。そのまま終われるように。あとは逆算。先頭を出したらどうしようとか、ランナーが二塁に行ったらこうしよう、とか。そういう想定で、そこからアウトを1つひとつということです。

──そうしてセーブを積み上げていったわけですが、振り返れば開幕3連戦で2敗。あの敗戦から得たものもあるのでは。

益田 あれは本当に良い経験になりました。あの経験は、なかなかできない経験だと思うんですよ、開幕から2連敗ですから(笑)。結果としては良くはないんですけど、シーズンで考えれば、タイトルを獲って終われた。そういう成績を残せたのは、あの2敗があったからとも言えるというか、力にもなったのは確かです。後輩に経験を伝えていくにしても、良いことばかりを経験していてもダメだと思うので。自分のためにも、後輩に伝えていくにしても、良い経験だったと思います。

──悪い結果も今後を考えれば経験としては良かったと。

益田 調子が良い悪いはありますからね。それがシーズンの一番最初に来てしまった。年間に10回くらいは失敗するもの。それが最初の2回に来てしまった。最初のインパクトって大きいですし、みんなのイメージも「何しているんだ」となったと思うんです。でも、年間に10回はある。だから、たまたま最初に来ただけと割り切って。結局、あの2敗を忘れるくらい頑張れましたから。

リリーフカーに乗ってマウンドへ。気持ちは常にフラットだが……


──ソフトンバンクとの開幕戦の場所は福岡(PayPayドーム)でした。遠征から帰り、自宅に車を止め、なかなか家に入れなかったそうですね。

益田 基本的に打たれたら家に帰れなくて(笑)。やっぱり気分は良くはないので。テンションも上がらないですし。そこを何とか家族には分からないように、時間をかけて、気持ちを切り替えたんですよね。まあ、あのときは(切り替える時間は)長かったですけど(笑)。20分くらい気持ちを整理して家に入りました。

──技術面ではなく、気持ちの切り替えが成績を上向かせたのですね。

益田 やっぱりメンタルが一番ですよね。ネガティブになってしまうと良い結果は生まれない。でも、結果が悪いとネガティブになってしまうんですよ。「今までやってきたことが間違っているんじゃないか」と思いがち。「それは違うぞ」「自分がやってきたことは間違ってないぞ」と、信念を持ってやっていく。それをやり続けてきたことが良かったと思うんです。

──その後、登板を重ねて9回のマウンドを守り続けましたが、チームは原則2連投まで。これもシーズンを振り返れば、大きかったのではないですか。

益田 大きいですね。蓄積は後半にくるので。投げている間はそうでもないんですけど、間が空くと2連投、3連投というのは、(体の負担になって)くる。そこを2連投に収めてもらっていたのは、最後まで投げ切れた1つの要因かな、と。

──連投中よりも、負担はその後に?

益田 3連投しても、別に3連投目の登板とか全然大丈夫なんです。でも、そのあとに1日、2日空いたりすると、しんどくなってくる。だから連投したあとに休むと不安になるんですよね。シーズン終盤に状態が落ちる選手は、そういう影響もあるのかなって。シーズン序盤に連投すると、投げている間の序盤は大丈夫なんですけど、少し休みを挟んでいくと、溜まった疲労があとあと、シーズンの最後のほうに出てくるので。

──休むのも勇気と言いますが、投手の本能として投げたいと思う気持ちも。

益田 もちろん、ありますよ。僕は責任をもって9回に投げているので。連投を回避すれば、その9回を別の投手に投げてもらうことになるので、申し訳ない気持ちもあって。でも、だからこそ、投げるときは責任が芽生えるのもあるんです。休ませてもらったんだから、もっと責任を持ってやらないとって。

──そんな連投時はベンチも外れます。客観的に抑えを見る良い機会にもなるのではないですか。

益田 いや、抑えに限らず、常に試合は当事者のつもりで見ているので。自分だったら、こう攻めるとか、バッターの反応を見たりしながら。その投手の結果どうこうは見ないで、自分だったらこうしようとイメージして当事者のつもりで見ているので、ベンチから外れたときだけではないんですよね。自分の考えは正解か、どうなのか考えながら。それが最初に言った想定にもつながっていくと思うんです。

引いたら負け


 1試合の結果だけではない。長いシーズンを考えても9回サヨナラは相手に勢いを与えるだけに、9回のマウンドは大きな重圧がかかる。絶対に引かない。絶対に攻める。そう誓う理由はここにある。

──メンタル勝負の抑え。気持ちのスイッチを入れるのは、いつになるのですか。

益田 う〜ん、どうだろう……。マウンドに行って、キャッチャーに最後の1球を投げたあと……かな(笑)。

──投球練習の最後の1球を?

益田 う〜ん、よくよく考えると、あんまり、ここっていうポイントはないかもしれないです。

──気持ちの波をつくらないように?

益田 人それぞれだと思うんですけど、僕は試合前練習、ブルペンと変わらないテンションでやっているんですよね。

マウンドに上がれば帽子のツバを押さえて目を閉じるルーティンには、1つの意味がある


──登板時に帽子のツバを押さえて、目を閉じるのがルーティンです。ここでスイッチを入れているのかと思っていました。

益田 そう言われると、そこかもしれないですね。あれは自分に言い聞かせているんですよ。試合によっていろんな場面がありますが、どの場面でも引いたら負け。だから「絶対に引くな」「絶対に攻める」と。誓いじゃないですけど。

──それが益田投手の信念になるのですね。一方、昨季は9回打ち切りもあり18引き分け。同点時の登板ではまた違ったものですか。

益田 勝っていれば抑えればチームも勝ち。それで任務完了ですけど、同点、とくにビジターはキツかったですね。(9回裏の登板のため)引き分けか負けしかない。セーブシチュエーションって、リードしているわけだから点を取られてもチームが負けるわけではない。でも、同点は1点も許されない。ビジターなら取られた時点でチームは負けるんです。自分たちに勝ちはなく、相手は負けはない。だから、セーブより引き分けのほうが個人的は価値がある数字かな、と。

──同点時の9回、相手の向かってくる勢いも違うと思います。

益田 はい。それに例えばカード初戦や2戦目なら、翌日の試合にも影響する。だからサヨナラ負けはダメ。投げるボールや配球うんぬんよりも、ゼロで抑えるか、抑えないかの勝負。本当にそことの勝負になってくるんですよね。

──展開を見ながら、ブルペンで肩をつくる時間も考えると思います。

益田 僕は基本的にウチの攻撃の間につくるんです。9回表に投げるなら8回裏に。9回裏に投げるなら9回表に。なので、攻撃時間が短ければ少ない球数しか投げないんですけど。多くても10、11球くらい。でも別に思い切り投げるわけではないので。キャッチボールの延長程度。肩ができればいいので、ルーティンはあるけど、ルーティンどおりできなくても大丈夫。臨機応変にできるようにしているのも良かったと思います。

──今シーズンもセーブを積み上げることをファンも期待していると思います。益田選手にとってセーブとはどんなものですか。

益田 映画のラストシーンなのかな、と思っています。みんながリードを奪ってきて、ここを抑えれば終わりというところ。みんな勝った気持ちで試合を見ていると思うんです。だから、結末を迎え、エンドロールが流れるところがセーブかな、と。分かり切った映画の「こうなるんでしょ」という最後ですよね。みんなが期待する結末で完結させたい。

──だからこそ重圧がある、と。

益田 そうなんですよね。バッドエンドにはならないように(笑)。

サイドハンドから投じる決め球・シンカーはなお健在。変わらぬ武器で今季もこだわりのマウンドに立つ


──チームとしての最高の結末は、もちろん優勝だと思います。

益田 はい。昨年は目の前に優勝がちらついているところで負けてしまったので、今年こそはリーグ優勝をしたい。もう50年以上も(勝率1位で)優勝していないので。それを目指して、ファンの方に優勝を見せられるように頑張ります。

──昨季は小島和哉投手、佐々木千隼投手ら、敗れて涙するシーンもありました。

益田 そういうところのゲームを重ねていくと皆、責任がより一層増していく。消化試合とは違う。皆、より責任を持ってプレーしているんですよね。今年は開幕から全員で1試合1試合、143分の1を積み重ねていきたいと思います。

【2021 Impressive Play】これも技


8.24 vs 日本ハム戦(札幌ドーム)

 投球の間合いを変えるほか、ときにクイックを交えて投じるなどテクニックを見せる。同点での登板だったこの日は、二死無走者で西川遥輝を迎えると、左足を上げて軸足で立ったあとに体勢を崩しかけながらも持ち直し、外角低めへ直球を投じてストライクを奪った。アクシデントではなく「意図してです(笑)」と計算されたもの。対戦を重ねる中で細かい技は大きな武器となる。

PROFILE
ますだ・なおや●1989年10月25日生まれ。和歌山県出身。右投右打。市和歌山商高から関西国際大を経て2012年、ドラフト4位でロッテに入団。1年目から開幕一軍入りを果たして開幕戦で一軍デビューを飾ると、新人記録となる72試合登板とフル稼働。2年目は抑えを務めてリーグトップの33セーブをマーク。以降は中継ぎに配置転換しながらブルペンを支え続け、19年から再びクローザーに。不動の守護神に君臨し、9回のマウンドを守り続けている。
タイトルホルダーインタビュー

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タイトルホルダーの喜びの声やタイトル獲得の背景に迫るインタビュー企画。

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