絶対的エースとしての存在感が増した1年だった。先発27試合、投球イニング196回2/3、6完投はすべてリーグ最多。首位攻防の厳しい戦いが続く中ひたむきに腕を振り続ける姿は、数字として表れる以上の勇気をチームにもたらした。そんなファイターズの大黒柱が追い求める理想の投手像とは――。 取材・構成=佐野知香 写真=矢野寿明、高原由佳 完投を可能にする取り組み
昨年、自身初のタイトルとなる最多勝利投手賞、勝率第一位投手賞を受賞。今年も最多勝利投手賞、最多三振奪取投手賞の投手タイトル2冠に輝いた。さらに、完投型の先発投手に贈られる沢村栄治賞にも選出されるなど、昨年からのさらなる進化を印象付ける2025年シーズンとなった。 ――最多勝は2年連続の獲得、最多奪三振は初受賞でした。
伊藤 最多勝は狙っていたタイトルというか、勝利数は一番目につくし貢献度が目に見えて分かるものだと思うので、先発投手としてこだわってきた数字です。最多奪三振も獲りたいとずっと思っていたので自信になりました。三振というのは他の成績と比べて運要素がないというか、投手としていかに相手打者を抑えられたか、圧倒できたかという数字であると思うので、すごくうれしかったですね。
――今年はさらにゴールデン・グラブ賞、沢村賞も初受賞。沢村賞はシーズン前から目標として挙げられていました。
伊藤 昨年のNPBアワードに出させていただいたときに「今年表彰されなかった賞を獲りたい」と言ったんです。それを実際に獲れたのは光栄です。
――伊藤投手は昨年もリーグ最多タイの5完投しています。以前から完投を意識されていたのでしょうか。
伊藤 やっぱり先発投手の華というか、任せられた試合を一人で投げ抜くというのは一番やりがいがあることだと思います。ただ、何球も何球も投げての完投ではなくて、目指しているのは100球、110球ぐらいで完投できる投手。だから、8回を100球以内で投げ切って、9回に「次どうする?」と聞いてもらえるような展開が理想です。これまでそういった投球ができていたかは別として、毎試合完投したいという気持ちは先発である以上は常に持ってきました。
――投手の分業制が当たり前となったのは、投げ過ぎによる故障を避けるということも要因の一つだと思います。故障リスクについてはどうお考えですか。
伊藤 う〜ん、今のところ問題なくできているので……。もちろん周りからの声は聞こえますけど、今できることをやっているだけなので、リスクについては考えないですね。ただ、オフに1年間戦える体をしっかりつくるというのは大前提として、いかに日々のリカバリー、コンディショニングをやっていくかということは、実際の試合よりも大事だと思っています。
――オフシーズンにウエートアップしたり体づくりに励むだけではなく、シーズン中の取り組みが大切、と。
伊藤 オフについて言えばトレーニングのボリュームはちょっと増えますけど、1週間どう過ごしていくかの強弱で言ったらシーズン中とほとんど変わらないと思います。なので、キャンプ中も他の選手と比べて投球数は少ないですし、たぶんキャッチボールの球数も少ない。いかに投げないで投げられるようにするかを常に考えているというか、実際にボールを投げる作業ではないところで体をキープする、向上させていくことを非常に大切にしています。
――日々の取り組みとして、具体的にどのようなことをしていますか。
伊藤 フォームの連続写真がありますけど、あれを頭の中にイメージしてピッチングのこのフェーズはこの動き、このフェーズはこういう動きができたほうがいいといったように枝分かれさせていって、それをトレーニングのベースにしています。どのタイミングでどのトレーニングをやればゲームのときにちょうどいいというのは大体把握できているので、登板日の翌日にやること、2日後にやること……といったようにスケジュールはほぼ決まっています。キャッチボールも、何メートルで何球というのも全部決めてやっています。そうやってリカバリーしながら・・・
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